最高にポップ!キュート!キャッチーな『タイピスト!』※ネタバレあり

[あらすじ]
女性にとって大人気の職業が秘書で、さらにタイプライター早打ち大会に勝つことが最高のステータスだった1950年代のフランス。田舎出身のローズ(デボラ・フランソワ)は保険会社の秘書に採用されるが、ぶきっちょで失敗してばかり。そんな彼女の唯一の才能であるタイプ早打ちに目を付けた上司ルイ(ロマン・デュリス)は、二人で協力し、タイプ早打ち世界大会に出ないかと提案する。(yahoo映画より)

[感想]
IMAX2Dで観た『スタートレック・イントゥ・ダークネス』について、鑑賞当時正直なにも感じられずに、特に感想を書いていないんだけど、後々に思い返すと良いシーンばかり思い出すし「もしかしたら傑作だったんじゃないかな?」ともう一度鑑賞しにいこうかと迷っています。まあ、当時面白いと感じなかったものが、あとでジワジワと尻上がりに評価があがっていくことは多々あることです。
僕にとってのPTAの『パンチドランク・ラブ』なんてものすごくその典型。『ブギーナイツ』『マグノリア』でひたすら感動した僕は、『パンチドランク・ラブ』を観て「なんて寝ぼけた映画なんだ、散漫なお話だなあ」なんて感じていたんですがが、最近もう一度見直したときに「ああこれは傑作!ゼロ年代でもベスト入るな!」ところっと評価が変わってしまったことがあります。
そんな後からジワジワくる作品を観ると何もわかってなかったんだなーと頭を悩ませることが多々あるわけですけど、それとは対極に即効性のある映画も存在する訳で、それが『タイピスト!』でした。

タイピスト!』は、可愛いだけが取り柄で仕事もできない田舎の女の子が秘書として都会に進出し、苦難を乗り越え頂点に立つことで市民権を勝ち取るベッタベタなステレオタイプのサクセスストーリー。お茶目でキュートな主人公ローズ・パンフィルがものすごく良くてで、そのキュートさだけで殆ど映画が成り立っているんじゃないかって感じてしまったほど。先に話したようにお話的にはベタなんですが、『オーケストラ!』の製作陣ということでもう安心してみてられますし、売り込みの上手さ(パンフレットが可愛い/『タイピスト!』と言うキャッチーなタイトルとタイトル通りの内容)と、装飾の可愛さ、パンフィルのコメディッチックなキュートさと即効性のある要素が多く、特に女性に勧められる映画じゃないでしょうか。

パンフィルは、タイピングの鬼コーチにしこたま練習をさせられ、一難あったり、一度はコーチと離れたりとトラブル続きなのだが、苦難があればあるほど、パンフィルのタイピングスピードが速くなり最後には機械の速度を超えタイプライターを新たな形式へと連れて行ってしまう。パンフィルは何があろうと、タイプを辞めず、気づいたら嫌いだったはずの鬼コーチに惹かれてしまっていた。
パンフィルが打つタイプの音は自らの鼓動のようにすら聞こえてくる。そのくらいタイプに一直線なのに気づいたら恋に一直線だったというラストがたまらなく好きで、大満足でした。

ラスト付近の世界大会で「愛している。」を世界各地の言葉で表現するというベタだけど、泣いてしまう演出に心を奪われ華やかに幕を閉じる。

スタトレも後で考えれば良かったと考えるが、たまにはこういう即効性のあるベタな映画、そして誰にも勧めやすい映画を観るってのも面白いなーと感じた。