これこそウルトラ・ヴァイオレンス!!『カレ・ブラン』を観ました。※ネタバレあり

[あらすじ]
近未来、フィリップ(マジッド・イヴ)は高層ビルが建ち並ぶ都市で母(フェイリア・ドゥリパ)と一匹の犬と一緒に暮らしていた。人肉加工工場で働く母親は心身共に疲れ切っており、ある晩、息子と話をした後で高層住宅のベランダから投身自殺を図る。一人残されたフィリップは、彼と同じような孤児たちの集まる施設に送られる。(yahoo映画より)

[感想]
短期間上映だったにもかかわらず、二回も劇場に駆けつけてしまった。舞台設定は、『時計じかけのオレンジ』で言われるような近未来SFです。劇場に張られていた批評では、『華氏451』や『THX1138』っぽいと書かれていました。人類は、「社畜」と「家畜」の二つしか存在していなく、その中で日々ゲームをしながら「社畜」として腐ったように生きていく。明らかにおかしい世界なのに、普通に暮らしていく人類を描く感じ・空気感は、個人的にはフィリップ・K・ディックの『未来医師』の医療行為が罪とされた世界に感じたし、最近だとアニメの『PSYCHO-PASS』的なディストピアSFのように感じました。それと関連性はないかもしれないが、久々に押井守映画が観たくなりましたね。

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未来医師 (創元SF文庫)

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あらすじだけ観ていて、どんだけヴァイオレンス描写が多い映画かと思いきや、BGMは殆どないし、会話も限られたこと以外はない。定期的に流れるブザー音と、機械的に「子どもをつくらないか?」「あなたたちは何年目です」「人工授精」「子どもを隠すな」と大筋のストーリーと関係してくる用語なんですが、随所の演出には必要のないような言葉がノイズとして表現されます。ただ一度フィリップの飛び降りシーンで「エレベーターを使いましょう」はわざと合わせてきたように、シリアスな場面で笑いを入れてくる。シリアスな場面に笑いを入れるのは、シャマランっぽいですね。まあ、シャマランのそれよりも意図的に作られているので、ちょっと厳密には違うかな。シャマラン天才だし。
ヴァイオレンス描写では、直接的な血を描きませんが、あの”黒い袋”あれだけ見ているだけで恐怖を感じるし、パーティーで人間のマークが描いてある食事を一斉に食べるシーンの効果音とか気持ち悪くて、本当に怖かった。社畜が家畜を加工していくシーンはありませんでしたが、あえて描かずに黒い袋を恐怖の象徴のように表現したのはすごかったですね。どこぞのヴァイオレンス映画よりずっとウルトラ・ヴァイオレンスだった。
それと結論に至るシーンだけど、怪物=狂った世界で普通に暮らす人、見てみぬ振りをする人と表現するのも上手かったですねー。僕が一番怖かったのは、守衛のおじさんの子どもがおじさんをギロっとにらむシーンだったりします。カフェでおじさんが孫と子どもは居ないと言ったのは、子どもではなくて怪物だったわけだからですね。心を隠しきれなくなったおじさんは、外で号泣するのですよ。あのシーン素敵でした。

それとジャンプカットをヴァイオレンスシーンで使う、特に女の子がフィリップにビンタ食らわすシーンとか最高でした。

思わぬ拾い物をしたという感じのする映画でした。ナイス!ウルトラ・ヴァイオレンス!!

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