宿命に翻弄される人々『プレイス・ビヨンド・ザ・パインズ/宿命』を観ました。※ネタバレあり

[あらすじ]
天才ライダーのルーク(ライアン・ゴズリング)は移動遊園地でバイクショーを行う刹那的な日々を送っていたある日、元恋人ロミーナ(エヴァ・メンデス)と再会。彼女がルークとの子どもを内緒で生んでいたことを知ると、二人の生活のためにバイクテクニックを生かして銀行強盗をするようになる。ある日銀行を襲撃したルークは逃走する際、昇進を目指す野心的な新米警官エイヴリー(ブラッドリー・クーパー)に追い込まれるが……。(yahoo映画より)

[感想]
久々にストーリーに関しては、事前情報を全く入れない状態での鑑賞でした。監督はあの『ブルーバレンタイン』のデレク・シアンフランスが務めています。やっぱり前作くらい重くてずっしりくる作品なのは勿論だったんですが、今作はもう兎に角かっこ良かった。

何よりもまずは音楽担当が、あの”マイク・パットン”!僕はマイク・パットンのことは、fantomasというプロジェクトで知っていまして大ファンです。fantomasは、ジャンル分けしづらいですが、アヴァンギャルド・メタル/ハードコアバンドとでも呼んでおけばいいでしょうか。
マイク・パットンは映画フリークとも呼ばれており、ホラー映画を自分なりにアレンジしてアルバムを出していたりもします。

※かの有名なオーメンのマイクパットンver

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※音楽ブログでもレビューしています。(あんまり更新していませんが‥‥)
※更にマイク・パットンは幾つものプロジェクトをやっていたり、音響系の方たちからも崇められているらしいです。

そのマイク・パットンをOPクレジットで発見したことから、テンションが高まり最初のバイクショーで猛烈に爆発した。マイク・パットンのスコアもバイクのエンジン音を殺さないように盛り上げる為に使っていて非常に好感がもてました。随所に使われるパットンのアヴァンギャルドなスコアに心が酔いしれてしまい映画そっちのけになってしまった。

映像が二の次になってしまいましたが、ストーリーを話していくと、最初は『ドライヴ』のバイクverみたいなストーリーなんですね。惚れた女の為に銀行強盗までしてしまって、相手の彼氏ぶんなぐったり…
バイオレンス描写はそこまで多くないんですが、この映画、最初のルークのストーリーからうってかわって2部・3部構成になっています。1部でルークは銀行強盗に失敗し、元恋人のロミーナに電話しながら警官に銃で撃たれて亡くなりますが、2部ではそのルークを撃ち殺した警官エイヴリーが主人公となり、無抵抗のルークを発砲し、後でルークに息子がいることを知り罪に苦悩しながらも悪党を倒したヒーローという立場で、仲間の汚職に再び苦悩するというストーリーです。その汚職についても自分がルークを殺してしまったことから逃げるため、警察所長を脅し地方検事(だったかな?)のポストに就くという汚れよう。

そして3部はいきなり15年後に飛びます。この映画、各部ごとの飛び方がまったく予想出来ない。
3部はルークとエイヴリーの子供たちが友だちになるという何とも悲劇展開になりながらも、「宿命」というタイトルに恥じない演出を魅せてくれて飽きずに最後まで見れました。ルークの子供がエイヴリーを森(警官に連れて行かれそうになった森でしょうか)に連れて行くっていう演出も見事だったし、ルークやエイヴリーたちの「宿命」でもあったし、子供たち、ルークの家族にとっても「宿命」になり得た素晴らしい映画でした。上映時間は140分と長めなんですが、この映画の中だけで「宿命」をいっさい省かず最初から最後まで完結しているし、凄くレベルの高い映画ですね。
上手く行かない夫婦と言えば『ブルーバレンタイン』だし、どちらもライアン・ゴズリングが”現在”を生きている男を演じていることからも、この監督のなかではかなり重要な出来事なんだろうな。ただ、『ブルーバレンタイン』もそうだったけど、ラストは結構さわやかなんだよね。そこが一番好感がもてる。もう一回くらい観に行きたいなと思えた素晴らしい映画でした。

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