ベルトルッチの無意識へ『孤独な天使たち』を観ました。ネタバレあり

[あらすじ]
孤独を愛する14歳のロレンツォ(ヤコポ・オルモ・アンティノーリ)は、家でも学校でも煙たがられていた。そんな彼が、学内恒例のスキー合宿に参加すると言い出し、母親のアリアンナ(ソニア・ベルガマスコ)は大喜びする。だが、ロレンツォは最初からアパートの地下室に隠れ、羽を伸ばして思い切り好きなことをするつもりだった。(yahoo映画より)

[感想]
なんと50周年!を迎えたベルトルッチが作った私的映画とも言える今作。病気によって映画製作が出来なかったベルトルッチの無意識がこの映画の出発点ではないかと考える。
精神的に問題がある主人公のロレンツォは、スキー合宿の代金を払わず、家の地下室へ籠る。そして、家族間トラブルが合ったと思われる、薬中の姉オリヴィアが訪ねてきて、一緒に同居を始めるのである。この閉鎖的な空間が登場すると、僕の大好きな『ラストタンゴ・イン・パリ』を思い浮かべてしまい、あらら?な展開にならないよなーなんて心配になったが、『ラストタンゴ・イン・パリ』を撮った時期のベルトルッチはかなり病んでいたとどこかで読んだ覚えがあるので、ある意味その妄想の無意識さが反映された作品だった。無意識が反映されているというと本作も似ている。
ベルトルッチは原作を読んだ瞬間、この映画を撮りたいと考えたらしい。

その閉鎖的な場所から、動こうとしない二人はベルトルッチ本人の状況の語りであり、窮屈に感じるかもしれないが、意外と生活しやすい環境のように感じられた。孤独な天使たちの表現方法かもしれないが、この映画、カメラが上を向くショットだったり、上から下へ、下から上へというショットが多い、偏見ではないが、精神病の人はよく上を向く(太陽?)傾向にあると聞いたことがあるので、そのような表現か。一度夢のなかで、母親をガラス張りの下から捉えたショットがあったのもそう言った意味だろうか。ipod(音楽)も自分の殻に籠るメタ的なものだろう。音楽センスはいかにも中学生が好みそうな選曲で、結構懐かしく親しみを感じてしまったが。

あのようなスリリングな生活は、誰しも子供の頃体験したかったと思うかもしれない。僕自身、秘密基地を作ってよく夜まで遊んでいた。そういったセンチメンタルな気持ちはあるのだが、どうしてもこの映画は、ベルトルッチの私的映画から抜け出せていない。面白かったように感じられるが、ラストの演出といい、天使たちはまったく成長していないことが語られている。どうしても後一歩が必要な映画だと感じた。