『駆ける少年』を観ました。

[あらすじ]
1970年代初めごろ、ペルシャ湾岸の小さな港町。浜辺に打ち上げられた廃船で暮らす孤児のアミルは、生活のためゴミ捨て場で空き瓶を拾って売ったり、水兵の靴磨きをしたり、水売りをしながら何とか生計をたてていた。大きな白い船や遠くに連れて行ってくれる飛行機、そして映画が好きなアミルは、ある時、読み書きができない事とに気付き愕然とする。そして字を覚えるために夜間の学校へ行き、取り憑かれたように字を覚え始める。

[感想]
昨年の『CUT』で西島秀俊に異常とも言える凄まじいシネフィル役を演じさせたエミール・ナデリ監督の85年の初期傑作作品を観てきました。

CUT [DVD]

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この映画あらすじ観ればストーリーが全て伝えられてしまうんですが、それ以上に俳優人の力と映像の力によって構成された映画です。
一応会話は存在するのですが、それ以上に主役アミルの叫びとタイトル通りの”駆ける”姿が大半を占めており、「なんだか退屈なのかな〜?」なんて思ってしまいますが、だんだんとこのどこまでも駆けるアミルの姿にストーリー自身が引っ張られてしまいます。
アミルはこの生活からの脱却をどこか夢見ていて、大型船や飛行機に叫んだりして身体で感情を表現します。それと、何よりあきらめない少年であり、水売りの仕事での食い(飲み)逃げ犯との激闘や、盗人呼ばわりしたミスター!との激戦、電車との駆けっこ…と悪い言葉で言えば諦めの悪い少年。

そしてペルシア語を覚えようと夜間学校に入り、筋トレしながらの勉強、大海原と戦いながらの勉強…
このシーンのエネルギッシュさを観ていて、昨年の『CUT』における殴られ屋の西島秀俊と姿を重ねてしまったし、この熱血感は島本和彦的キャラクターとも感じました。
それと一番近しいなと感じたのは、『マクロス7』における熱気バサラ…まさに「俺の叫びを聴けええええええええええ!!」とアニルの腹からの声を聞けました。


※『CUT』の殴られ屋シーン後の西島秀俊


※アミルと一番近しい存在だと感じた『マクロス7』の熱気バサラ。自分の歌で山を動かそうとする…


そしてラストシーン手前の氷を巡っての駆けっこシーン、ここは相手の足を引っ張ったりとコミカルに描いているかと思えばラストの氷を手に入れたシーンのショットが完璧過ぎる画で震えました。(あれって遠くから望遠で撮ってるんですかね?)

とにかくエネルギッシュで生々しく命を燃やしている映画だった。まさに傑作!