『思秋期』を観ました。※ネタバレあり

[あらすじ]
失業中のジョセフ(ピーター・ミュラン)は、酒浸りの上に感情の抑制が利かない中年男。酒に酔っては周囲の人々とトラブルを起こすという、怒りと暴力ばかりの毎日に精神を疲弊させていた。そんなある日、ひょんなことから彼はチャリティー・ショップの女性店員ハンナ(オリヴィア・コールマン)と知り合う。朗らかで機知に富んだ彼女と接することで、今まで感じることのなかった平穏な気持ちを持てるようになるジョセフ。次第に交流を重ねて固い絆を育むようになる二人だったが、ハンナが抱えるある秘密をめぐる事件が起きてしまう。(yahoo映画より)

[感想]
酒浸りの荒くれ者が、ある出会いをきっかけにほんの少し人間的に成長するお話。個人的には、冒頭の導入部のインパクトと、終わりの着地点が思った以上にぶっ飛んでいて、かなりびっくりしました。
すごく感想が伝えづらいのですが、脚本、俳優、演出あたりは殆ど完璧と思われるくらいの完成度を誇っているんですが、手放しに面白かった!いい映画観た!とは非常に言いづらいストーリーになっています。これが例えば、イーストウッドあたりが主演になっちゃうと一転してファンタジーちっくになり、面白いアクションだったぜ!「っよ!ダーティハリー」とか言っちゃうんでしょうけど、『思秋期』は非常に生々しい作品となっております。
※なーんで、イーストウッドの話を出したかというと、なんとなく観ていて『グラントリノ』を思い出しちゃったからです。こじんまりとした小さな街での出来事、引退して仕事も無く朝から暇を持て余す男、鍛え抜かれた肉体‥‥まあ、共通点なんて殆どないんですけど、ふと『グラントリノ』感を感じてしまいました。

といっても、『思秋期』の主人公ジョセフ(失業中)は、相当クズやろうで、中学生レベルの抑制力で、感情の赴くままに行動してしまい、後悔する。
これまでずっと自分の軽率な行動で後悔し、その連鎖の中で生きている人です。周りの友達もろくでもない奴ばかりの環境ですが、一転、全く自分の世界観にいない人物ハンナと出会います。宗教心や生き方は、彼が体験した事の無い全く別の人であり、一番嫌っていたタイプの人間に惹かれます。ハンナに事件が起こる中、なんとか自分の少ない抑制力のなか必死に生きようとします。そして、終盤、ハンナの夫が死んでいるシーン‥‥(ここはかなりびっくりした)

人が何かきっかけがあったとしても、人生について何かを決意をするってのは中々出来るもんじゃなく、特に無職のおっさんがそんな風に決意するってのはごく稀な事だと思います。でも、そんな中、自分の過去に反省して、前向きになって人生を歩んでいくんだから素晴らしいよね。

改めて、映画の力に魅せられたいい作品でした。

評価点:77点