『フィッシュ・タンク』を観ました。※ネタバレあり

どこにも行けなくて‥‥

[あらすじ]
ミア(ケイティ・ジャーヴィス)を取り巻く環境は劣悪だった。住んでいるのは労働者階級のアパートで、隣人たちは粗暴な上に、家族は昼間から酒を飲む母親と、口汚く罵ることを覚えてしまった妹。彼女自身、やり場のないフラストレーションから、常に周囲とトラブルばかりを起こしている。唯一、自分を素直に表現できるものはダンスだけ。ある日ミアは、台所を上半身裸でうろつき回る母親の友人コナー(マイケル・ファスベンダー)と出会う。コナーはミアたちの生意気さを意に介することなく、自然と家族の中に入り込んでくる。初めて自分をきちんと扱ってくれる大人の男性に魅かれてゆくミア。そんなある日、“女性ダンサー募集”の広告を目にした彼女は、コナーの応援も受けて、挑戦を決意するが……。(goo映画より)

[感想]
兼ねてから評判がよく、三大映画祭というタイミングで、観に行ってきました。

あらすじの通り、主人公ミアを取り巻く環境は、最低です。何が最低って、母子家庭はしょうがないにしろ、母親がビッチで恐らく過去に次々男を乗り換え、現在のコナーに落ち着いた風にみせてますが、絶対別れる感がぷんぷん臭ってくる。
彼氏のコナーもどこか胡散臭い。腕にタトゥーが入っていて、ミアに「それ誰?」と聞かれると、「前の彼女だ」と全く同様をみせずに答えられるあたりから、こいつは所帯持ちだなと確信してしまいました。(まさにそうなのですが‥‥)
家庭はまだしも、友達関係はというと、冒頭から友達との喧嘩シーン。何があったかは語られませんが、性格の歪んで素直になれないミアは、得意の悪態をついて仲悪くなったのではないだろうか。

このミアのどこにも自分の行き場のない心情は、序盤から出てくる”白い馬”に投影されているんじゃないかと思います。
ミアは、初めてこの馬を見たときから、なぜか逃がそうとします。確かに、つながれている馬は、よぼよぼでエサもろくに与えられてないように見えなくもない。そこで一悶着あって、失敗し、もう一回逃がそうとするんですが、また失敗します。彼女の”白い馬”を逃がそうとする気持ちは、自分自信のどこにも居場所がない、ここから逃げたいけど、逃げられないというもどかしさを表しているのかなと思いました。
それと、”白い馬”絡みで言うと、”勘違い”や”表面的”がこの映画のストーリーを牽引している気がします。
彼女は、母親の彼氏コナーに恋をしてしまい、腕のタトゥーも「前の彼女だ」と軽々だまされてしまうところ、母親もそうだと思いますが、どこか表面的な魅力(若いから仕方ないかな)にだまされています。
それは、”白い馬”に対してもそうで、後になって判るんですが、別のこの馬はエサを与えられていなかったわけでもないです。高齢で病気だっただけで、彼女は可哀想と勘違いして逃がそうとしました。(逃げ出させた後の事を全く考えていないのは、若いから‥‥)
後は、ダンスシーンが出てきますが、このミアはダンスが下手です。別に僕はダンスに詳しい訳でもないですが、ミアは自分は踊れる子!と勘違いして、ダンスを得意げに披露しますが、あれ?下手?とちょっと自分の感性が悪いのかと、疑ったくらい戸惑いました。

こういった勘違いからストーリーが進んでいき、終盤にコナー家にミアが不法侵入するというシーンがあるんですが、ここがなかなか緊張感あるシーンなんですね。
ふと、ビデオカメラを見て、あれ?子供?え?えええ?と、周りを見だすと明らかに子供のおもちゃや妻っぽい服が視界に入ります。
こいつはやっと気づいたのか!とビンタしたくなりましたね。(まあ最後はコナーに殴られますが‥‥)


終盤の母親と妹との3人でのダンスシーンにはぐっときましたね。
何よりよかったなーと思ったのは、最後の妹とのハグシーン。
それまで、かわいげない悪態ばかりついていた妹が「大嫌い!」と泣きながらハグするってのは、ずるいよなあ〜

基本的にクズばかり出てる映画なので、ちょっとむかついたりしますが、これは中々見応えあるし、スクリーンに釘付けになりました。
いい映画を観れたと思います。

評価点:82点