『トータル・リコール』を観ました。※ネタバレあり

一番必要な愛の欠如

[あらすじ]
容易に記憶を金で手に入れることができるようになった近未来、人類は世界規模の戦争後にブリテン連邦とコロニーの二つの地域で生活していた。ある日、工場で働くダグラス(コリン・ファレル)は、記憶を買うために人工記憶センター「リコール」社に出向く。ところが彼はいきなり連邦警察官から攻撃されてしまう。そして自分の知り得なかった戦闘能力に気付き、戸惑いながらも家に帰ると妻のローリー(ケイト・ベッキンセイル)が襲ってきて……。(yahoo映画より)

[感想]
フィリップ・K・ディック原作『追憶売ります』の映画化作品です。この映画化は僕が知ってる中で二回目で、アーノルドシュワルツネッガー主演で同タイトル『トータル・リコール』('90)以来の映像化ですね。

原作の『追憶売ります』は、短編小説であり、「火星が‥‥火星が‥」って雰囲気はあるんだけど、リコールにいって、問題が起きてリコールに再び戻るってところで終わってて火星には行ってないんですよね。僕は初めて読んだときに泣きそうになりました。なんで泣きそうになったかはよくわからないんだけど、なんだか愛に触れたというかなんと言うか‥‥

その為、リコールに行った後については、監督の自由な”想い”で物語が進んでいいのです。

映画はその”想い”だったり、”愛”だったりが凄く重要だと思うのですが、今回の作品については全くそれを感じさせてくれませんでした。ディック原作をネタとしてつかっただけのたんなる商業映画という印象しか残りませんでした。
まあ、たしかに、前に映像化されたのと違う路線で進みたいという意思は伝わってくるものはありました。
只、ディックの小説と『トータル・リコール』('90)では火星に行きたいという”想い”がビンビンと伝わってきましたが、この映画はそれがないのです。火星なんておまけ程度で出てくるだけで、どこへ行ったやら‥‥
気がつけば、金をかけた薄っぺらいアクション映画になっていて、いかにも『ブレードランナー』('82)的な近未来中国的な町並み、お金を払う描写もなく普通に記憶を植え付ける‥‥
アンジェリーナジョリーが出てきそうなアクションに、『マイノリティ・リポート』っぽさがでる高速でのシーン。今が旬だとばかりの『インセプション』風の無重力アクション。

映画への愛が薄れた結果、とても商業的な映画にはなっていました。安易にシュワちゃん版をやっていなかったのは関心したけど、もうなんかね。普通のアクション映画になってましたね。
これだった、ディックを原作として使う必要ないし、まるで『アジャスメント』の悲劇‥まではいかなかったにしろ、つまらない映画でした。

評価点:34点