『おおかみこどもの雨と雪』を観ました。※ネタバレあり。

アニメの面白さを教えてくれる。

[あらすじ]
19歳の大学生花は、あるときおおかみおとこと運命的な恋に落ち、やがて雪と雨という姉弟が誕生する。彼らは、人間とおおかみの両方の血を引くおおかみこどもとしてこの世に生まれたのだが、そのことは誰にも知られてはならなかった。人目を忍びながらも家族四人で仲良く都会の一角で暮らしていたが、ある日、一家を不幸が襲い……。(yahoo映画より)

[感想]
デジモンアドベンチャー 僕らのウォーゲーム!』、『時をかける少女』、『サマーウォーズ』の細田守監督待望の新作。キャラデザは新世紀エヴァンゲリオン貞本義行細田氏とは3回目の仕事ですね)
公開前から、かなりの期待値が漂っていた中での公開でしたので、レイトショーでもほぼ満席でした。思わず、細田氏すげー!なんて独り言をつぶやきながらの鑑賞。

ストーリーは、上記あらすじ通りなのでその辺は割愛して‥‥

まず、感想から言うと、すごく面白かったです。前作『サマーウォーズ』は、面白いけど、ちょっとボロボロじゃない?ってところが多くて、あんまり好きじゃない作品でした。『時をかける少女』はボチボチ‥‥(大林宣彦版のほうが好みです)
と、期待してなかったんですが、これは面白かった。

前半の花がおおかみおとこと出会ってから、引っ越す手前までは、正直つまらなかった。
まず、花がおおかみおとこに惹かれたのもよくわからんし、ゴミ収集車につまれるのって、そんな演出ありか?と頭を抱えたほど。僕が一番笑ってしまったのは、出欠票をおおかみおとこに渡そうとするシーンで、二回とも、同じ台詞で引き止めること(「ちょっと、待ってください」だったっけな)、二回も同じ台詞かよ!と思わず笑ってしまった。(妙に気になったんですね。あそこ)
それと、おおかみverでのベッドシーンって‥‥(どこのAV?)
たぶん、前半パートは雰囲気逃げしたんじゃないかと思います。恐らく、映画でおおかみとの日常生活なんて無理があって描けないんですよ。尺が短すぎる。TVシリーズアニメものなら時間があるからいけなくもないだろうけど、2時間っていう制限では厳しすぎた。それにそこは重要なポイントじゃない。だから、音楽流して、いかにも大変だった日々を演出している。
あれが映画の半分くらいだったら完璧駄作でしたが、20分くらいで終わらしたから良かった。

中間パート以降は結構安心して観ていられました。只、ファンタジーって言うフィルタを十分に通していないと、花が仕事を始めるまで、引っ越しも出来て子供二人抱えて仕事もしてないのに育てていられたの?って金銭的な矛盾が出てきて、のれないかもしれませんね。もしかしたら、おおかみおとこがめちゃくちゃ稼いでいたのかも!(引っ越し屋じゃ無理でしょうね現実的に‥‥)

中間以降なんで良かったのかと言えば、魅力的なキャラの存在に助けられていたと思います。やっぱり、雨と雪の存在が大きいでしょう。後は、近所の人々の優しさ、都会人が思う田舎の人をうまく描けてたと思います。(実際どうか知らないけど)
雨が溺れるシーンや、雪と雨、花と雪山をかけるシーンは、キャラが動いているだけで面白い。アニメのというより、アニメーション本来の面白さを感じさせてくれるシーンでした。
只、個人的に残念だったのは、CGが所々出てきたのがね。全部、絵で勝負してほしかったんだけど、テーマ的にもナシじゃないし、綺麗だったから別にいいんだけどさ‥‥

雨と雪の性格が全く違うって言うところから、最後のおおかみと人間どちらを選ぶのって演出は、さすがだなと身をのけぞって観てしまいました。おおかみなのか人間なのか、とても重要な決断ですよね。おおかみを選んでからの雨の遠吠えとか震えたしね。只、花は山なめてるよね‥‥子供が心配なのはわかるけどさ‥‥

あの決断は、同じく細田守が演出した『おジャ魔女どれみ ドッカ〜ン』の40話"どれみと魔女をやめた魔女"の焼き回しでしょう。
只、あの40話は残酷すぎた。日曜の8時30分こども向け番組にあそこまでの現実を突きつけるなんて、細田氏は本当に残酷な人だと思ってたけど、今回は明るく終わったのが良かったかなと感じました。(それだけ大作映画を撮る人になってしまったという寂しさもありますが‥‥)

ちょっと、荒っぽいし、下手くそだなあと思ったところはありますが、それにもましてキャラの良さもあったし、アニメーションらしい良さもあった。何より雪ちゃんがかわいい!ってところで全部チャラに出来たし、結果いい映画でした。

評価点:75点

[作品概要]
作品名 :『おおかみこどもの雨と雪
監督  :細田守
製作年 :2012年
製作国 :日本
上映時間:117分

[関連作品]
デジモンアドベンチャー 僕らのウォーゲーム!』('00):代表作『サマーウォーズ』の元ネタであり、上映時間40分という短い作品ながら、『サマーウォーズ』以上のことをやってしまった作品。ちょうどネットが高度成長期だったかころのお話で、あの時代だったから良かったんだよね。
そういえば黒沢清さんの『回路』も同じ年の映画だったね。ベクトル違うけど、あれもすさまじい映画でした。

おジャ魔女どれみ ドッカーン〜どれみと魔女をやめた魔女〜』('02):映画ではなくTVシリーズおジャ魔女どれみ細田さんが演出した40話です。細田さんの最高傑作とも呼び声が高いですよね。
魔女は永遠に生きる設定なのですが、その現実を魔女をやめたミライという魔女が教えてくれる。そして、最後に私と一緒にくる?と究極の選択をどれみにさせるんですね。
細田さんは、永遠をガラスというメタファーで演出していました。ガラスは固体にはならない。人間の目ではわからない速度で動き続けている、それは魔女にしか見れないと‥‥

画も画でどこか暗い。


日曜朝8時半の番組には思えないっすね。笑