『SR サイタマノラッパー ロードサイドの逃亡者』 入江悠 2012年 (ネタバレ有り)

夢から逃げ続けた男が夢に追われる‥‥

[あらすじ]
 かつて埼玉の弱小ヒップホップ・グループ「SHO-GUNG」の仲間と別れ、上京したマイティ(奥野瑛太)はラップを断ち切ることができず、先輩ヒップホップクルー“極悪鳥”の手伝いをしながらメンバーに入る機会をうかがっていた。しかし、ラッパーになりたいと願いつつも現実は厳しく、ある事件をきっかけにマイティは追われる身となってしまい……。(yahoo映画より)

[感想]
 今年のベスト1級になりえる傑作映画でした!僕は、SRシリーズは、1しか観た事がありませんが、話を聞く限り2との関連性がなさそうだったので、違和感なくストーリーに入っていけました。正直見終わった後に、「うおおお、やべええ」という衝撃が走り、もう少しで「目にゴミが入ったんだよ!!」と誤摩化したくなるくらいの感情むき出しになったしまいました。こー衝撃を受けちゃうときってのは、いつも思うけど、冷静に観れないし点数が1.2倍ぐらい跳ね上がってしまうので、これから観る方に参考にならない風に書いてしまう‥‥
 正直、粗がなかった映画だったとは言いません。例えば、マイティが最初に追ってから逃げるシーン、本気で追えば絶対捕まりますよ。最後に逃げるシーンもそうだし、最後の刑務所でのシーンも周りの人間が止める気なさすぎ。次の演出の為に、リアリティを欠如しているってのは否めないと思います。大体警察にしろ、殺人未遂事件があったなら、もっと早く通行止めして検問設けるべきだしね。そのため、細かい演出等がどうしても気になってしまう人は、のれないと思うので、いい映画じゃない!って言うのは的外れな意見ではないかと思います。
 只、僕は映画に惹き込まれてしまったし、その粗が致命的なミスとしては感じられなかったのでのることが出来たのだと感じます。
 今回、埼玉から東京へ上京したマイティが主人公です。「東京」という夢の舞台で、自分の夢を叶えるために上京していく、SR1の続きなんですね。SR3は、夢を追って一度はあきらめ、さめた視線(立場)から観たマイティが、結局夢を捨てられず、逆に夢に追われていくっていう映画です。
2年後のマイティは、ラップがかなり巧くなっているし、すごく努力をしていてんですね。まあ、ある事件をきっかけに転落していくんですけど・・・。SR1に比べ、かなりシリアスなストーリーになっており、笑うところは笑えるけど、なにか切なさを感じます。転落するマイティに感情移入してしまったし(手を出すのは無しだと思うけどね)、ラスト手前の長回しシーン(15分くらい?)なんて、衝撃を受けました。舞台には輝いている昔の友達、必死に努力したのに俺は、こんなところで‥‥。と考えると、「マイティ〜〜!!泣」と心で叫んでました。笑
 正直あの長回しシーンが良すぎて、あれで映画終わるかと思ったけど、最後はちゃんと希望も付け加えているんですね。最初は、要らなくね?って思ってたんですけど、マイティのむき出しの感情に入り込んでしまいましたよ。あと、良かったと言えば、マイティのダークさを押し出している映画に、イック、トム、征夷大将軍のバカバカしさが出てくると、観ている観客が、安心するというか救われる!こいつらずっと観ていたいと思ってしまう異次元の存在でした。それと、最後の彼女へのラップシーン!ここは、宇多丸さんがバッチリ解説してたので、良かった!とだけ言っときます。

 がっちりハートを掴まれるシーンが幾つも入っていて、ずっとこいつら観てたいよ!、これで完結か!残念‥‥と、バッチリ余韻に浸れる素晴らしい映画でした。名古屋では、シネマスコーレさんだけでしか公開していませんが、絶対面白いので観に行った方がいいと思います。

評価点:89点