『ル・アーヴルの靴みがき』を観ました。(ネタバレ有り)

ル・アーヴルの靴みがき』 アキ・カウリスマキ 2011年 93分

フワフワ感が逆に心地が良いです。

[あらすじ]
 昔パリで暮らしていた芸術家のマルセル(アンドレ・ウィルム)は、今は港町ル・アーヴルで靴磨きをしながら生計を立てている。彼は自分に尽くしてくれる妻(カティ・オウティネン)と愛犬ライカとの暮らしに満足していた。だが、ある日妻が病気で入院した後、アフリカからの難民の少年と出くわし、警察に追跡されている彼をかくまうことにする。

[感想]
 アキ・カウリスマキ監督作品、カウリスマキ監督作品は初めての鑑賞でしたが、すごくヘンテコな映画だったという印象です。
 のっけから主人公マルセルが靴”みがき”の仕事をしていると殺人事件に出くわします。それなのに何でしょう。主人公や仕事仲間の何にも起こっていない感!、一応巻き込まれると問題だから逃げるんですけど、なにか生気というか覇気が感じられませんねー。すごくこの映画フワフワしています。そのフワフワ感を感じたところを箇条書きすると、

・トレーラーから子供が逃げても必死にならない警察。すぐに遠くに逃げれないんだからもっと必死に探そうよ。
・マルセルの奥さんが具合が悪くて、病院に搬送されるシーンで、奥さんが体操座りをしているんですが、あんまり具合悪くなさそう!
・なかなか必死に捜索しない警察。一回通報されてますよね?多分、いい警察に通報されたんでしょうけど、それっていいの!って思いました。(たぶん、難民問題にイヤイヤしていて、逃そうよ子供だしっておもったのかな)
・隠れてろって言われているのに、靴みがき仕事をするために、街に出る黒人の子供。先生の子供っていってたから頭よくていいコなので、稼ごうとしたんだろうけど、お前馬鹿か!って思いました。
・後半では、普通に黒人の子供と外にでるマルセル!お前、最初は出るな!って言ってただろ!
・重病だった奥さん‥‥、普通に治っちゃってるよ!
・桜!?桜?
・意外と奥さん蔑ろに扱われてねえ?愛しているが故でしょうか。
・一応”移民”話だけど、あんまり突っ込んでなくね?

一覧にすると、数々のフワフワポイントがこれでもか!ってくらいあります。実際もっとあった気がします。僕は、中盤あたりまでなんてヘンテコな映画だ!って斜めに構えてみていたんですが、だんだんこのヘンテコさ、フワフワ感にやられました。はっきり言って、映画的にはぬるい!と感じましたが、それ以上に、この人々が愛おしく感じてしまいました。今思い出しながら、文章を書いていますが、どんどん映画が愛おしくなってきます。もう一回みたいなと思わせるぬるさなんですよ。主要登場人物全員に愛情、優しさが詰まっています。邦題の”靴みがき”も、”靴磨き”と漢字が使われないのは、この映画の雰囲気からかなーと思いました。
 ぬるいぬるい言っていますが、映像はピカイチでいいですね。暖かみのある色調で、この映画の優しさが存分に伝わってくる。名古屋だとシネマテークでしか公開されてませんが、おすすめなので是非観に行って欲しい映画ですね。ぬるさにやられた!

評価点:64点