『別離』を観ました。(ネタバレ有り)

『別離』 アスガー・ファルハディ 
イランの社会情勢を映し出す‥‥

[あらすじ]
 イランのテヘランで暮らすシミン(レイラ・ハタミ)とナデル(ペイマン・モアディ)には11歳になる娘がいた。妻シミンは娘の教育のために外国へ移住するつもりだったが、夫ナデルは老いた父のために残ると言う。ある日、ナデルが不在の間に父が意識を失い、介護人のラジエー(サレー・バヤト)を追い出してしまう。その夜、ラジエーが入院し流産したとの知らせが入り……。

[感想]
 本年度アカデミー賞外国語映画賞受賞作品。イラン映画は初体験でしたが、とても面白かったです。まずタイトルの『別離』と聞いて、夫婦が離婚する様を描いた作品と思ってましたが、それは違い上質なサスペンス映画でした。
 冒頭は、裁判所?で夫婦が離婚を掛け合っているシーンから始まります。イランでは、どちらかに非がないと離婚出来ないらしいです。イランの社会情勢を反映させているのかもしれませんが、この映画では、女性をあまり好意的に描いていません。冒頭のシーンでも別れる理由がめちゃくちゃ。簡単にまとめると”私は家族の事を思って海外生活したいの!夫はそれに賛成しません!だから別れます!”と、わがままっぷりが出ています。しかし、夫婦には介護しなければならないおじいちゃんがいるので、移住は出来ないんですねー。
恐らくイラン社会情勢から、女性がなかなか活躍出来ない場であるので、海外移住したいと思っているって事だと思います。
この映画、冒頭からは離婚しか思い浮かびませんが、この後物語を語る上で重要な事件が発生します。その事件の前に登場人物として、お金持ちな主人公は、別居した母親の代わりにメイド的な人を雇うんですね。そのメイド絡みで事件が起き、主人公シミンは殺人の容疑がかけられてしまいます。しかし、この事件についても、メイドがきっかけというか、このメイドが悪いんです。ごまかしてはっきりしないし、なんとか罪から逃れようとしますが、宗教心が強いイランの女性は、コーランには逆らえません。サスペンスと同時進行で、夫婦の離婚問題も同時進行で進んでいきます。冒頭シーン後、この家の子供は、母親が別居すると言って出て行くんですが、一緒についていかないんです。それが伏線になっていて、最後の方に理由が分かります。そして、最後のシーン、裁判所?で、両親どちらについていくか?で、この映画は終わります。殺人の容疑と同時進行で夫婦の離婚問題も取り上げられていきますが、殺人容疑でイライラすれば夫婦間の仲も悪くなります。実に良く出来ています。
 イランは詳しくありませんが、イランの社会情勢を語っている本作は数々の賞に相応しいなと感じました。今年を代表する重要な映画として、これからも話題になりそうな良質な作品でした。

評価点:82点