『おとなのけんか』を観ました。(ネタばれ有り)

おとなのけんか』 ロマンポランスキー 2011年

79分会話劇が駆け抜ける!

[あらすじ]
 ニューヨーク・ブルックリン、子ども同士のケンカを解決するため2組の夫婦、ロングストリート夫妻(ジョン・C・ライリージョディ・フォスター)とカウアン夫妻(クリストフ・ヴァルツケイト・ウィンスレット)が集まる。双方は冷静かつ理性的に話し合いを進めるが、いつしか会話は激化しホンネ合戦に。それぞれが抱える不満や問題をぶちまけ合い、収拾のつかない事態に陥っていく。(yahoo映画より)

[感想]
 GW映画1作目です。名古屋公開が遅くて今更ながらセンチュリーシネマにて鑑賞。ポランスキーは、昨年『ゴーストライター』という作品が公開されています。あの作品は、全体的に陰鬱な雰囲気が漂っているサスペンス映画でした。批評家の間ではなかなか好評だったようですが、個人的には胡散臭さと大したことが無いサスペンスが気に食わなくてあんまり合いませんでした。面白かったけどね。
今作の『おとなのけんか』は作風がガラッと変わって元々舞台ともあり、会話劇コメディになっています。初めに言っておくと「とても面白かった!これぞ娯楽!」という結論です。
 まず、冒頭は公園が遠景で撮影されているシーンです。79分という作品の短さから、冒頭から気が抜けません。映し出される公演で”こどものけんが”が始まります。そこで、ある事件が起きて次のシーンに移ります。
この遠景で公園を映すというシーンは、エンドロールでも流れるんですが、最後に見るとあーあーそーだよねーと、この映画は、”おとなのけんか”だよねーと納得するんですねー。
 肝心の物語の内容は、ある事件をきっかけに、加害者側の親と被害者側の親同士が、事件を清算させようとして和解するシーンで進みます。
ただ”和解”と言っても、この親同士は思想がまるで違う!(後に明らかになりますが)って事も有り、序盤からとげとげしく、ちょっとそう言う事いうの?感が溢れています。
表面上取り繕うと、珈琲飲んだり、お手製料理出したりしますが、何か危なっかしいバランスの上で成り立っているので、ハラハラドキドキするんですねー。この親同士は社会的地位にも差があります。

加害者側=現実主義、富裕層
被害者側=理想主義、中間層

加害者の父親は、仕事第一で生きている人のため、そもそもあまりこのけんか話には興味がないし、ある種事なかれ主義的部分があり、どうせよくなるっしょ!とどこかそっけなさを感じられます。
加害者の母親は、一見貴婦人のようにふるまっていますが、この映画のなかで、一番のくわせもの!一番己を押し殺して生きているんですねー。
被害者側の父親は、表面上取り繕っている感が全開であり、こいつなんか胡散臭いなー!感がたっぷり!でも、この4人のなかで自分は誰と自問自動した時には、この人のポジションになってしまうと思います。
被害者側の母親は、理想主義。この問題についても、誤ればいいじゃん!和解すればいいと勧めているのに、この意味は?どうなの?と、思想的に突っ込んできて、一番イライラさせるポジションの人です。ジョディーフォースターがこの役をやってるんですが、ピッタリ!笑

このように、全く思想が違う人たちで話をまとめようとするので、話がまとまりません!こんなものは、簡単に収拾がついて、何も考えずに「ごめんなさい!」って子供に誤らせれば、親同士もけりがつくんです。それをジョディーフォースターが捻じ曲げて、意味のない討論になっていくんですねー。
しかも、話がだんだん違う話にそれて、議題ごとに敵味方が入れ換わります。この入れ換わりが自然でハッと物語に引き込まれるんですねー。
特に、僕が一番好きな台詞が中盤に、被害者側の父親が、18年物のスコッチを飲みだして、加害者側の父親にも飲ませるんですが、加害者側が、「おっ!このスコッチいけるな」と、ぐいぐい飲むシーンです。
いかに不毛な議論をしてるかーと感じる良いシーンですね。

 アメリカ人って不思議な生物で、帰りたいなら帰ればいいものの、なんとか良い夫婦、負けず嫌いが先行してしまい、珈琲でも飲むか?って誘いは断れません。個人的には、嫌ならとっとと帰れよ!と何回も思いましたが、このお節介というか、偽りというかがポランスキーアメリカ人に言いたいことなのかなーと思うとニヤリとしてしまいました。
 79分という短い映画でしたが、それ以上に楽しめる映画だったと思います。

評価点:59点