2017年上半期に見た新作映画ベスト10

今年も早いもので気がつけば半年経過してるらしいです。例年のごとく映画を見る日々が続いております。見逃した映画もたくさんあるのですが、上半期は心霊ビデオを入れて63本見ていたようです。下半期はジェームズ・グレイやボネロの新作が待ち遠しいのですが、どちらも公開されるんでしょうか(特に調べてない)。ということでいつも通りのベストテンです。

今年のイメージキャラクターは『トリプルX:再起動』と『イップ・マン 継承』の2作品に出演しているドニーイェンです。

  1. 浮き草たち
  2. 夜明け告げるルーのうた
  3. ほんとにあった!呪いのビデオ71
  4. 人生タクシー
  5. 傷物語<Ⅲ冷血篇>
  6. WE ARE X
  7. ミス・ペレグリンと奇妙なこどもたち
  8. SING/シング
  9. マリアンヌ
  10. ジェーン・ドウの解剖

以下、選出理由を。

  • 『浮き草たち』(アダム・レオン)

とても愛おしいボーイ・ミーツ・ガール。昨年の東京国際映画祭で上映されて知人からの評かも高く待ち遠しく一般公開を待っていたが、気がついたらNetflixで公開されていた。「都市/郊外」の対比が素晴らしいです。移動式遊園地のネオン、プール小屋でのできごと、それらすべてが愛おしく少し遅れてきた青春を物語る。ダントツのナンバーワン!

少し遅れてきたボーイ・ミーツ・ガール――アダム・レオン『浮き草たち』感想 - つぶやきの延長線上

今年は二本も湯浅政明の作品を見られるという幸運に見舞われている。泣けるとかよりも、パワーヴァイオレンス*1を感じた。これにつきるでしょうか。気持ちいいダンスや作画が押し寄せるが、その快楽に浸りきる前にビートを変えてくる。テンポがいいというより、リズムが独特で素敵でした。アニメーションということと、音楽の関係などで考えると楽しそうな作品。攻めて2回見たかったのですが、気がついたらすでに近くの劇場での上映は終了していたので残念。スクリーンでもう一度見たいですね。フォーマット(円盤)というより、スクリーン環境で映える(というか見る意義のある)作品の気がします。

  • 『ほんとにあった!呪いのビデオ71』(福田陽平、寺内康太郎

『呪いのビデオ71』は演出を『監死カメラ』の寺内康太郎に交代。そこからして新たなことをやろうとしているのか?と。今年でこれを超える心霊ビデオは出てこないのでは?と思えるほど本気。1本目の「ドライブレコーダーからしてうかがえる。特に素晴らしかったのは「かくれんぼ」。子供たちとかくれんぼをしていると、視界から子供たちが消えてしまう。どこを探しても見つからないが、ふと瞬間に視界を横切る子供。この瞬間を捉えたカメラが素晴らしい。横切るタイミングが完璧だ。前後編モノの「瑕疵」もなかなかよかったですが、「停電」や「シルエット」などの短い投稿モノからして面白い作品。

  • 『人生タクシー』(ジャファル・パナヒ)

パナヒは『これは映画ではない』(2012)ぶりでしたでしょうかね。パナヒがタクシー運転手という設定なんですが、これがとにかくうさん臭さで満ちていて終始笑ってしまう。交通事故で瀕死の男性を病院に連れて行こうと奥さんがギャーギャー騒ぐところなんて本当にサイコー!それと金魚を返さなければならないの!っておばさん二人組のコントかよって空気感がグッドでした。今年で一番笑った映画の一本。

ひとつであったはずの物語が『鉄血篇』『熱血篇』『冷血篇』と、3つに分断されてしまった『傷物語』。しかし、分断されることでつながりを強固にする物語だったように思えます。キスショットと阿良々木の屋上のシーンの美しさよ…。商業アニメでありながら、インディペンデント・アニメーションにも接近した作品だったんじゃないでしょうか。アニクリさんで3部作について書いていますので、読む機会があればぜひに↓

「アニメクリティークvol.6.0 新房昭之ノ西尾維新、『傷物語』完結記念号」への寄稿について - つぶやきの延長線上

  • 『WE ARE X』(スティーブン・キジャック)

「この映画の製作が終わったら、私は音楽ドキュメンタリーを]やめなければならないかもしれない。X JAPANの物語はあまりにもドラマチックでこの後、どう作ればいいかわからない」と語るスティーブン・キジャックの言葉がすべてを表現しているのではないでしょうが。ファンだったのでどうしてもひいき目に見てしまいがちですが、「痛み」を抱えた作品が好きなのでどうしても上位に来てしまいますね。スタジオでのYOSHIKIとTOSHIのショットには涙が止まりませんな…

スティーブン・キジャック『WE ARE X』感想 - つぶやきの延長線上

時代を超えたボーイ・ミーツ・ガール!これまでのティム・バートン総決算的な映画であり、優しさあふれ愛おしい映画だった。見ている間とにかく幸せな気分になった。最近レンタル始まったようなので再見したい作品です。

時間の合間に見た映画だったのですが、これがとてもよくできた動線映画でした。「成功/挫折」がガンガン動くカメラによって演出されています。あと、とにかく歌が素敵です。どうもこういったステロタイプの成功秘話的な物語に弱いですね。

ガース・ジェニングス『SING/シング』(字幕版)を見た【感想】 - つぶやきの延長線上

スパイ映画だけに嘘っぽさがつきまとう映画。特に冒頭ブラッドピットが降下してくる砂漠のシーンのいかがわしさ。ワンショット目から引き付けるものがありました。とにかく最後まで荒唐無稽な物語でたいへん楽しめました。 

嘘っぽさがつきまとう――ロバート・ゼメキス『マリアンヌ』感想 - つぶやきの延長線上

ホラー映画で廊下を怖く撮ることができる監督、これは才能でしょう。ある日、解剖室に綺麗な女性の遺体が運ばれてくる。解剖を続けていると不可解な事実とともに出来事が…密室系ホラーの流れになっていきますが、次々起こる霊障のタイミングが素晴らしく中だるみもしませんし、何よりショットが的確。劇伴は少しやり過ぎなきらいもありますが、幕引きを考えるとこれはこれでよかったなと思った。


選外でよかった作品

バンコクナイツ』は観光ムービーとでもいうべきでしょうか。とにかくバンコクの夜が綺麗に撮影されています。どこにも行く果てなく、さまよい続けるってのはどうしても惹かれてしまいますね。『イップ・マン継承』エレベーター〜階段でのドニーイェンとムエタイ戦の場所とアクションを連動させた激戦は最高でした。トリプルXはリアルタイムでファーストを見ていたので、ヴィンディーゼルが本作に戻ってきただけでぶちあがり、ちょっぴり泣きそうになったりと思いがけない記憶とのクロスオーバーで多幸感に満たされました。『昼顔』演出が素晴らしい映画ですね。最後はJホラーかよってルックでこれまたグッドでした。無限の住人死んでも死なない木村拓哉の物語。一度死ぬんですが、蘇るアイドル……。夜は短し歩けよ乙女は季節が1つにまとめられた映画になっていましたね。人生は陸続きだよ〜と。『コクソン』ナ・ホンジンはきっと『封印映像』とか『闇動画』あたりを参照してきたのでしょう。長すぎるんですが、思わぬ拾い物でした。『息の跡』ホースから氷が出てきたのは笑いました。『ドラゴンxマッハ』刑務所でのアクションがとんでもなくすごい。ただ、アクション以外はかなり微妙だったりしますが…。キングコングはとにかくわかりやすい演出でバンバンドンバチやっててそれだけで楽しかったです。

ウィルソン・イップ『イップ・マン 継承』感想 - つぶやきの延長線上
ある日、山から帰ってきたら人が変わってしまっていた――ナ・ホンジン『哭声/コクソン』感想 - つぶやきの延長線上
地獄でド派手にドンパチやるぜ!『キングコング: 髑髏島の巨神』を見た!!!感想 - つぶやきの延長線上
ポップに!ディープに!繋げよ乙女『夜は短し歩けよ乙女』感想 - つぶやきの延長線上


まとめ
今年なかなかこれはダントツ面白いぞーといった作品に出会えていなかったのですが、『浮き草たち』、『夜明け告げるルーのうた』、『呪いのビデオ71』、『人生タクシー』にはガッツリハートを持っていかれてしまって、いい体験ができました。『デスレース2050』とかも見てないし、見逃した作品のレンタルも始まっていくと思うので、下半期も変わらずこのペースで見ていけばいいかなと思っています。心霊ビデオは年間ベストのときにまとめて触れようと思います。

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*1:音楽のジャンル。