京アニの正統派「部活アニメ!」−『響け!ユーフォニアム』5話までの感想

GW明けに会社に出てみれば、吹奏楽部だったらしい上司の二人が「響け!ユーフォニアムってアニメ知っているか?」なんて話が始まっていて、「ハテ、ココハドコカ?オッサンガユーフォニアム?」なんて思ってたのだけど、息子から教えてもらったかなんかで見たら面白かったらしい。『けいおん』大ヒットしたし、普段アニメ見ない層も取り込んでるんだな〜と関心するなり、『響け!ユーフォニアム』の感想でも書こうってな感じで5話までの感想。

◼「京アニ」の部活アニメ!
京アニ」の部活アニメという鉄板感が漂ってますよね。バカ当たりしたと言えば『ハルヒ』や『けいおん』シリーズが想起される。

ただ、部活アニメといっても、これらの作品は主人公の自主性が強い部活だったと思う。先生の存在よりも、生徒の「やりたい」が強かった。『氷菓』もそっちか。しかしながら、『響け!』では先生が生徒たちの指導をするにあたり、物語の進行役も担っていることがわかる。(『Free!』も部活アニメだけど未見です)

先生が指揮をすること(指導すること)で物語が動いていく。
「部活」を舞台とするには、手堅い手法だと思うけど、それだけでなく見ていると、基本的な演出がしっかりできているし、やっぱり京アニ上手いなと思わせる。


◼息を吐くこと、無意識なこと、意識すること
先生が指揮することで物語が動いていくわけでけど、物語が始まるのは主人公の久美子の言動が引き金になっている。第1話で彼女は、中学時代に全国大会に出場出来なくて悔し泣きしている高坂さんに「本当に全国いけると思ってたの」と無意識に余計な一言をいってしまう。彼女は金管楽器ユーフォニアム)を担当しているので、息を吐くこと、言葉を話すこと、で物語がスタートするのだ。

彼女の余計な一言が最初は、本当に余計な一言だったが、これが物語のスタートになっているように、第1話以降では人との距離を近づけるに有効な手段として扱っていく。余計な一言を言ってしまい悔やんでいた久美子だったが、高校に入学して部活でいざこざがあった時、彼女は楽器を演奏するように、意識して高坂さんに話すシーンがある。


「すごく元気でた!私も頑張らなきゃって思った。だから、ありがとう。」

高坂さんのドヴォルザークを聞いたときに彼女が思ったことを意識して言葉に乗せた瞬間。このシーンでは、彼女の思いが言葉に乗っている。

5話ラストシーン「最高のカット」とはこのことだと言わんばかり。
このカットで彼女が演奏して「スタートしている」ことを意識しているように、無意識だった彼女の言葉が、意識的に言葉にすることで物語が動いていく。


◼気まずさと、合奏すること
順序が前後するが、北宇治の吹奏楽部は一年前に当時の三年生と二年生で”真面目に”部活やるか、”楽しく”部活をやるかのやる気の違いで、今の二年生のモチベーションが低くなっている現状にある。1話で久美子が北宇治の演奏を聴いて下手と言っているように、彼ら・彼女らは心が通じ合っていないので、演奏が合わない。合奏していないことになる。

合奏は”息を合わせる”ということ。久美子が余計な一言でから回っているうちは勿論のこと、北宇治の吹奏楽部の息は合わない。サンライズ・フェスティバルの行進に関しても、みんなと息を合わせる演出の一つだ。もともとは、先生に少しずるい天秤にかけられ「全国」を目指してしまい、気まずい雰囲気だったが、そういった先生のスパルタトレーニングによって、「アイツを見返してやる!黙らせてやる!」と物語が動いていく。

高坂さんは、この歳にしてはなかなか空気を読めない存在なのかもしれないが、物語に変調をきたす重要なキーパーソン。久美子との関係もそうだけど、二年生との関係を意識せず本気で部活のことを考えていたり、チーム全体が不安に揺れていれば音を入れる。

大事なことは言葉で語るよりも、吹奏楽部らしく音で伝える演出。(5話)
言葉の代弁、いやそれ以上の音楽の力を信じた演出とも言える。
けいおん』シリーズでいえば『天使にふれたよ!』に置き換えられる。
音楽以外でも『たまこラブストーリー』でいえば、バトンのキャッチ及び糸電話のキャッチによるコミュニケーションに言い換えられる。


キャッチできなかったこと、キャッチできたこと。
久美子でいえば、無意識に言ってしまったこと、意識的に言ったこと。
ある人物に対して出来なかった、出来たことが演出になっているところは、
映画・TVの違いはあるが、『たまこラ』と『響け!』の物語構造が似ている。

というか、主人公が克服していく…といった作品は一般的な物語と言えると思う。5話で久美子が中学自体の友達に、中学の頃の友達がたくさんいる南宇治のところに行こうよと声をかけられた時に、断って更に行かない理由を嘘をつかずに述べた時に彼女が成長したと実感できる。このくらいの年齢であれば、言われた相手が露骨に久美子のことを嫌悪する可能性があってもおかしくない。でも、『響け!』ではそういった反応を示さず、あくまでも久美子の新しく始めることを軸に動くことがわかる。


(このスカートがヒラリって表現最高ですね)


(そして連続する最終カットは仲間の所へ戻る)

久美子の「余計な一言」から物語がスタートし、吹奏楽部という舞台をうまく機能させ、彼女が意識して言うことで更に物語が加速する。こういった演出を見て、TVアニメのお手本のような作品だなと感じた。それと、『たまこラ』以降は顕著に実写のレンズを意識した演出をしているし、『響け!』では実験からすでに「手堅いな」と思わせる方法論までに成長している。今の所ベスト回は、久美子の成長が感じられた5話。まだ半分以上も残っているし、これからも楽しみなアニメですね。