『汚れた心』を観ました。※ネタバレあり

今まで出てこなかった話を映像化したってことだけは良いんですが‥‥

[あらすじ]
第2次世界大戦終決直後、写真館を営むタカハシ(伊原剛志)は妻ミユキ(常盤貴子)と共にブラジルサンパウロ州の町で暮らしていた。そこで暮らす多数の日系移民たちは情報を遮断されたままの状態で、大半は当然日本軍が勝利したと考えていた。そんな折り、元陸軍大佐ワタナベ(奥田瑛二)が行政により禁止されている集会を開き……。

[感想]
予告でみたときから、必ず観たい!と思っていた作品でしたが、内容は悲惨というかなんと言うかという印象。
こういう戦争の陰鬱な出来事を映像化すると、道徳上なかなかキツくあたれないのですが、映画と元の話(事件)ってのは、全くの別物として評価すべきだと思うんです。
今回のような陰鬱、悲惨な話で失敗した映画の代表格がアンジェイ・ワイダの『カティンの森』だと僕は思っています。あんなに退屈で、つまらない映画で見せ場が最後の数十分にも関わらず、僕は評価ができませんでした。陰惨、悲惨な事実をもとにした映画ってのは、お話自体が映画の力に勝っちゃっていて、どうも映画の出来が悪くても、なかなか悪いとハッキリ言えないものです。

カティンの森』なんてドキュメンタリー風に撮れば佳作くらいにはなっていたと思うんですよね。

という、観点からみると、今作の『汚れた心』も『カティンの森』的なんだけど、まだがんばっているなと思いました。

戦後直後の日本の裏側ではこんな事態になっていたんだなということがわかりましたし、情報が入らないっていう状況は今では考えられませんが、恐ろしいことだなと感じました。
それに、まるで宗教団体のごとく、強い指導者に疑いもなくついてくってのは恐ろしいことです。よく、企業でも「お客様は神様だ」とか言葉を使いますが、だったら「客が死ねっていったら、お前は死ぬんかい!」という、いいあいになったり、そういう身近なことからも連想できるなとも思いました。

まあ、お話はわかったんだけど、映画はつまらないものでした。
なんとなく、音楽でスリラーちっくなことをやってるんだけど、滑り倒し。見せ場を作ってるつもりなんだろうけど、全くスリリングではないし、興奮もしない。これだったら、もっとサバサバやってくれたほうが、いいよ、なんて感じたり‥‥

それと、常磐貴子はまあまあだったんですけど、伊原剛志がダメダメ。
本人は演技してるつもりなんでしょうけど、人を殺して嘆いているところや、本当にこれでいいのかと悩んでいるときや、SEX(性格にはキス)している時も全部同じ顔で一本調子。
陰惨な出来事だし、苦悩を表現しているのはわかるんだけど、いつまでもしかめっ面してればいいんじゃないっつの。

あと、「私は戦争を体験した」と、導入部と最後の台詞はいらない。すごくマヌケだなーとしか感じませんでした。

評価点:28点