『少年と自転車』を観ました。

少年と自転車』 ジャン=ピエール・ダルデンヌリュック・ダルデンヌ 2012年

[あらすじ]
 児童相談所に預けられたまま12歳になろうとしていた少年シリル(トマス・ドレ)は、いつか父親を見つけて一緒に暮らしたいと願っていた。ある日、彼は美容院を営むサマンサ(セシル・ドゥ・フランス)と出会い、ごく自然に彼女と共に週末を過ごすようになる。二人は自転車に乗って街を走り回り、ようやくシリルの父親(ジェレミー・レニエ)を捜し出すが……。

[感想]
 昨年のカンヌ国際映画祭グランプリ受賞作品。ダルデンヌ兄弟何回目の受賞でしょうか?4回?5回目?とりあえず、名実ともに力のある兄弟です。
 この『少年と自転車』は、05年のパルムドール賞を受賞した自身の『ある子供』との類似点というか言いたいことは似ていますね。それに見終わった後の何とも言えないニガニガしさだったり、登場人物への憤りだったり、ずっしりと重いものを背負わされる感じも似ているかも知れません。特に導入部で、『ある子供』のソニアは、出産後の子供の父親ブリュノを探しても見つからない部分は、『少年と自転車』のシリルの親父を探す様とかぶります。二人とも貧困層であり、なかなか居場所が見つからない。精神的な意味でも居場所がありません。まあ『ある子供』場合は、父親ブリュノの物語でしたが、『少年と自転車』は、シリル、子供視点から観た居場所のない子供です。
この子供を演じているシリル、演技がキレキレです。巧すぎて、めちゃくちゃむかつく糞ガキに思えてきてこんな奴どうにでもなれ!と思ったくらいです。
そのうち『ある子供』でリュクス役だったジェレミー・レニエが父親役で出てきます。このジェレミー・レニエがまたロクデナし野郎なんですねー。あんまり映画では細かく描かれていないけど、恐らく子供を捨てた理由は、シリルのおばあちゃんにあたる人かなんかが亡くなって、子供を保ちながら働くのは無理だと思って捨てたんでしょう。その他にも”女”がらみもあるだろうな・・・
 『ある子供』との比較はこれまでにしておいて、『少年と自転車』は迚面白かったです。87分とコンパクトにまとめられている上に、シリルは常に走ったり、自転車に乗っていたりと疾走感があり、なんとなくテンポよく進んでいくんですね〜。BGMも殆どありまえんが、お話の切り替え部では鳴らしてます。あれはシリルの気持ちが動いた時に流れているんでしょうかね。確か4回ババーンと流れたと思います。
只、この映画というか、この監督は、言わずにわかってくれ感が強く、あんまり細かく心情描写や説明をしません。特に、サマンサがシリルを里親にしたときなんて、わけわかりませんよね。自転車も買い戻したとかどれだけ子供欲しいんだ?ナイフでさされてもまだ見捨てない?わけのわからない執着心があるもんです。それなのに、恋人はばっさりと切り捨てる。一番かわいそうなのは恋人じゃねーかとか思います。

 人物にじっくり入って感情移入してしまう人とか、全部説明してくれないと納得いかない!と思う人は、あれ?なんて感じてしまう部分があるかもしれませんが、すこし寛大な気持ちで観ればいい映画観たなーと感じられると思います。この映画のラスト的にも清々しい映画ではないですが、恐らく今年のベスト10くらいに入りそうな映画でした。

評価点:77点