『時代の移り変わり〜百貨店のこれから〜』

「若いおしゃれ好きな女性100人にアンケートをとりました。「好きなブランドは?」ってTVアンケートをよくみるけど、よっぽどのファッションフリークじゃない限り、H&Mやらフォーエバーなんちゃらなど、私は安くて可愛いものを着るの!って意気揚々に話しだすだろう。10年以上前だったら、絶対に出てこなかった言葉だ。
ちょうど私もバブル崩壊から、もの心ついた頃なので、この若い世代の暗くて、ひたすら景気が悪い、と言われ続けていた時代で生きている。なんせ、エヴァンゲリオンなんかが超ヒット作品として挙げられているんだから、本当に暗い時代だったのである。バブル後〜ゆとり世代は、バブル全盛のいわゆる「ブランド思考」が殆どない。まあ、鞄だけ、財布だけとかはたくさんいるけど、上から下まで全てブランドもので統一している人なんて一握りだろうし、今の人はそこまでそろえようとも思わない。勿論この景気の悪さが生んだ産物はなにも悪いものだけではなく、牛丼が280円だったり、スーツが3万円、と価値観がまるっきり変えられるくらい安くて、おいしい、いいものってのが生まれてしまった。したがって、先のアンケート(例だけど)に代表される女性は、いい目をしているし、全然普通なのだ。昔のように、ザギンの百貨店でウィンドウショッピングというのが陰を潜めた。今更、百貨店で高いブランド服を買うなんてなくなったし、インターネットで個人輸入すれば、誰もが簡単に安くていいブランド品も買える。百貨店も元気がなく、三越伊勢丹が統合するという昔じゃあ考えられないことも起きた。”まさに時代の移り変わり”
先日記事にも書いたが、今年のアカデミー賞は『アーティスト』、『ヒューゴの不思議な発明』なにか時代の移り変わる様、過去の映画へのオマージュが含まれた映画がノミネートしていた。その中でも、『アーティスト』は、栄光からの挫折そして、復活という王道ストーリーだが、百貨店は、『アーティスト』みたいに人に助けられて強引に戻っていくんじゃなくて、同じくノミネートされていたブラピ演ずる『マネーボール』のビリービーンのように、悩み苦労し新しい時代へ挑戦していかなければならない。その挑戦をやったのが、名古屋松坂屋だろう。

名古屋松阪屋では、H&Mの出店を決めた。百貨店史上初の試みであり、名古屋初出店のH&Mである。基本的に東京、大阪のあとの3番目か4番目くらいに話題の店が入る名古屋だが、これはなかなか思い切った戦略だと思う。若い人の百貨店の高くて堅苦しいイメージを変えるにはいいチャンスだ。かといって、話題作りにはなるけど、H&M以外のものが売れるかは百貨店の腕だろうから成功とは言えない。しかし、百貨店のプライド捨ててまで新しいものを取り込むというのは、なかなか好感が持てる。
その好感を何処かに吹っ飛ばしてくれたのが、高島屋の入社式だ。新しいことをしたはいいが、それで何の意味あるの?と頭を抱えてしまった。

12年度の入社式は、スーツ禁止!カジュアルでくること!と馬鹿げたことをしでかした。まあ、別にカジュアルで会社にいこうが、アパレル色の強い百貨店だし、別にいいけどと言いたいところだが、この入社式、役員がジャケットノーネクタイスタイルだったのだ。自分等はいいかっこしといて、たくさん写真とられてしまう新入社員にはスーツ禁止って言う愚作。まあ、大人がカジュアルスタイルで仕事しているなんてダサイし、カジュアルといってもさすがにシャツ1枚とかじゃ会社これねーだろうしな。

「新しい感性、若いエネルギーで古い習慣をぶっ壊してもらいたい」

と抜かしていようが、スーツ禁止カジュアル出席なんて古くさい親父たちが考えた、その場しのぎの案にしか思えない。結局会議で、今後の経営は、話題作りはと話しているうちに「スーツ禁止にしてみれば?」とギャグからスタートして、何にもいい案がないから、そのギャグが通ってしまったのだろう。古い習慣を壊したいと考えているなら、経験豊かなあんた達も少しは頭使えよと醜態だけさらけだした残念なニュースでした。