スティーヴン・スピルバーグ『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文章』(2017)

重要機密書類はいとも簡単に持ち運ばれてしまう。それは密会する部屋にて複製され「最高機密文章」の文字は切り取られ新聞社へ運ばれる。今の時代というか、私自身がここまで仕事に精を出したことがないのでまったくもって新聞社のゴリゴリな風土は理解しがたいのだが、各人が新聞というひとつの目標を目指していくこと。そしてそれが繋がれていく――リレーのバトンのように――といった映画だった。ただどうだろうか? 接続されることに対してもちろん切断――映画でいえば政府や法律など――が出てきていたが、それがサスペンスを生むかといえば、そうとも思えなかったのである。

ここからは単なる印象論に落ち着いてしまうが、どうも切断/接続といったリズム――つまり緊張/弛緩――がチグハグさを生んでいたように思った。たとえば冒頭付近で蛍光灯の光から(飛行機の)窓の外の光へ繋がれるというカットがあったが、そこから妙に違和感を感じる。『ブリッジ・オブ・スパイ』であれば前衛的ともいえるような過度な照明が綺麗な接続として機能していたと感じられたし、『宇宙戦争』でいえば「光」が恐怖として描かれていた。意図したショットが機能として活きている…いうなれば普通のことかもしれないが、スピルバーグは的確にその演出ができたはずだ。

盗聴されないように幾つもの公衆電話を使いながら慌てて小銭を落とすシーン。機密文章を届ける謎の女(やたら胸を強調して撮っている)。何度もメイルストリープの家を訪れるトムハンクス。足を机の上にあげたり、態度がデカいトムハンクス。巨大な装置として恐怖を与える印刷機、そして不穏な黒電話。さすがに面白いシーンはあるのだが、「責任の重さ」という精神的課題(切断)と新聞紙という物質的な軽さがかみ合っていないように感じられた。接続が快楽に達する前に切断されていく――ある種それもひとつのリズムなのだろうが、個人的なバイタルと合わなかったのかもしれない。

ただ前段で書いたように装置を怖く描いてしまうというのはスピルバーグならではのように感じられたし、エンドクレジット前の引き際のそれまでとは明らかな差異があるような嘘っぽいシーンと好きなシーンはそこそこあったのでよかった。

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