今年のHR/HM・HCの秋フェスが結構すごいことになっている件について

今年もあっという間に冬が去り、年度が変わりGWに突入してしまった。帰省、旅行はもちろん、キャンプや登山などのアウトドアに精を出す方々もいて、そこらじゅう賑わっているようですが、こう暖かくなってくると、音楽フェスの話題が尽きない。

◼日本の音楽フェスについて
例外的に時期が早い音楽フェスも多いが、大体が夏に開催され、代表的なのが日本ROCKフェスの先駆け的存在のスマッシュ主催FUJI ROCK FESTIVALFUJI ROCK FESTIVAL '19|フジロックフェスティバル '19)。今年はなんとMotorheadが参戦するなど、思わずHR/HMファンも唸りを上げるようなバンドを招聘。また、殆ど日本バンドで固めるロッキング・オン主催ROCK IN JAPAN FESTIVALROCK IN JAPAN FESTIVAL 2019)は日本最大級の集客を担う。都市型フェスの先駆けクリエイティブマン主催のSUMMER SONICSUMMER SONIC 2015)は、METALLICAMUSEなど海外のビックバンドをヘッドライナーに揃えつつ国内のバンドや、近年はアイドルを投入したりと、ジャンルレスなアーティストを集める。


◼日の目を浴びない音楽ジャンルのフェスについて〜日本最大規模のヘヴィメタルフェス
前段で名前を挙げたフェスは、ロック〜ポップとジャンルが幅広く、キャッチーであることからどれも集客が数万単位となる。それに対して、なかなか日の目を浴びない音楽ジャンルもある。

元々、日本では激しい音楽(エクストリーム・ミュージック)が根付かない背景があり、こういったジャンルは数百キャパのライブハウスで行う小規模フェスというかイベントが主流になっている。なぜ根付かないのか?といことについては、色々と言われがあるようだが、まずは島国であることが挙げられると思う。逆に幾つかの国が隣接する欧州(特に北欧)地域では、エクストリーム・ミュージックが盛んであり、規模の大きい音楽フェスがたくさん開かれている。例えば、ドイツのWacken Open Airhttp://www.wacken.com/jp/)は世界最大規模のヘヴィメタルフェスであり、毎年7万人を集客する。その他にもフランスのHELLFESTHellfest - Open Air)、イギリスのDownload FestivalDownload Festival | Download Festival 14th - 16th June 2019 | Donington Park)など、大規模なフェスが盛んだ。それぞれの国自体の規模は決して大国ではないが、隣国からのアクセスが良い、それによって集客も見込める。また、日本に根付かない理由として、こういったエクストリーム・ミュージックは日本が世界に先駆けるということ自体がなかなかないことが挙げられると思う。

日本のバンドがヘッドライナーを担当して、海外アーティストを招待する。また、逆に日本のバンドをヘッドライナーにおいて開かれる大型フェスなんてのもない。そういったバンドがなかなか出てきていないのも実態だろう。それは、日本の環境もあるかもしれないし、激しい音楽が根付かない風土があるのかもしれない。とは言っても、例えば、CATHEDRALのリードリアンは、先日のベスト版リリースが記憶に新しい日本の80年代ハードコアシーンの伝説的存在G.I.S.M.の影響を話しているし(http://www.grindhouse.jp/featured/cathedral.html)、NAPALM DEATHのシェーン・エンバリーは日本のS.O.Bに衝撃を受けたと語っている。(NAPALM DEATH | 激ロック インタビュー)このように、日本のバンドの影響を受けたという海外バンドマンは少なくない。

こういった日本のバンドが影響を与えるってのは少なからずあっても、実際に大型ヘヴィメタルフェスが開かれていなかった。そんな中、こういった業界の風穴を開けたかったのか、大きなビジネスチャンスを掴もうとしたのかわからないが、SUMMER SONICを運営するクリエイティブマンが、2006年に日本最大規模のヘヴィメタルフェスとして立ち上げたのが、LOUD PARK*1LOUD PARK 15 - SLAYER / MEGADETH and more!である。

初年度には、SLAYER、MEGADETHANTHRAXとスラッシュ四天王のうち3バンド*2を揃えたり、ドゥーム・メタルの教祖的存在Cathedralや、日本のメタルキッズの間でも知名度が高いARCH ENEMYChildren of bodomを招聘するなど、様々な年代に適用するフェスが完成した。しかしながら、日本最大規模のヘヴェメタルフェスも回を重ねるごとに、「06は最高だったけど、今年はダメ」*3なことを言われたり、メタルファンの鬼門でもあったBABYMETALを投入するなど集客に力を入れてしまった。そして、13年にはKing Diamondの直前キャンセル(両者の間で色々と揉めていたよう)したり、14年にはManowarがキャンセルとなってしまい、信頼は完全になくなってしまった。

失意のどん底のなか、クリエイティブマンは信頼回復のため、今年のLOUD PARKのラインナップ発表はいつもよりバンド数を増やし過去最高レベルのラインナップを発表した。

SLAYERの三年に一度の法則は、ファンのなかでも常に囁かれていたことであるし、「SLAYER出せばいいんだろオメエら」な雰囲気もあり、まあ予定調和な気もしないでもないが、これまでラウパ未参戦だったGAMMA RAYの参戦。 ANTHRAXの久々参戦、グラインドコアからはNAPALM DEATH、国内からは日本ヘヴィメタル代表格のOUTRAGE参戦と、SLAYER差し引いても申し分もないラインナップだと思う。


◼その他のエクストリーム・ミュージックフェスについて
「メタルファン大歓喜!」賑わいを見せるラウパであるが、ラウパと同時期の秋に開催されるフェスとして、11月に4日間チェコのアホフェス(褒めてます)OBSECE EXTREME ASIAホーム / OEF asiaが二年連続やってくる!!


※写真は昨年のチラシです。

オブシンは、LOUD PARKよりもさらにコアなラインナップとなっており、グラインドコア、ゴアグラインド、クラスト、ハードコアパンクデスメタルスラッシュメタル…など、本当にジャンルの垣根を越えたエクストリームミュージックの祭典である。昨年度はヘッドライナーとして、クラストの伝説DOOM、ナードゴアグラインドのJig-ai、グラインドコアのCRIPPLE BASTARDSなどが来日。会場はラウパに比べれば、浅草KURAWOODと全然狭い箱だが、チケットも即売するなど賑わいを見せた。

また、日本のグラインドコアバンドによって2014年より開催されているマイナーフェスGRIND FESThttps://ja-jp.facebook.com/grindgrindgrindfestinjapan)が今年も開催され、昨年と同じく日本最大級のヘヴィメタルフェスLOUD PARKと同日に開催する熱の入れようだ。グラインドフェスはスケートパークで行うこともあり、バンドがLIVEをやっているなか、後ろの方でスケートをしている人がいたりとなかなかカオスなイベンドなよう。*4

その他にもH.I.P主催のOZZFEST JAPANOZZFEST JAPAN 2015 【オズフェス・ジャパン 2015】)にはKornやアルバムセールスも2,000万枚を超えるゴシックバンドEvanesenceが来日したり、今まで日の目を浴びることがなかったエクストリームミュージックが改めてネットを賑わせているなと感じる。また、すごく個人的見解としては、ヘヴィメタルと向き合い続けたアニソン*5喜多村英梨に代表される声優のメタル好き発言等や、水樹奈々のようなメジャー声優のBPMの激化が、少なからず時代性を象徴しているように感じる。それに激化した00年代以降のV系音楽。DIR EN GREYを代表格として、それに続けとメタルコア、デスコアといった音楽的要素を取り込むバンドが非常に増えてきた。

もしかして本当に徐々にであるがHR/HM、HCといったようなエクストリーム・ミュージックが根付いてきている?!と確証じゃないけど、こういった背景からヒシヒシと感じてくるのである。


◼音楽フェスの醍醐味について〜「イベントの力」

音楽フェスの醍醐味と言えば、野外で食べるフェス飯だったり、広々としたところで飲むお酒が格別に美味しい!ことだろう。また、広い会場で好きな海外のバンドを見れることや、知らなかったバンドやジャンルの発掘となったり、音楽を多元的に楽しめるいい機会だ。

もう一つ醍醐味というか、これは紳士的に音楽を見ていくと「フェス(イベント)の力」を感じることがあるだろう。例えば、サマソニフジロック、ラウパなどは海外バンドが来日するだけでテンションが上がってしまう。それはフェス(イベント)の力というよりも、来日するバンドはその日しか見れない特別感と、好きなバンドが見れるといった力に作用されている。しかしながら、同じフェスでも、もう少し集客が少ない、OBSECE EXTREMEではラインナップは基本的に日本のバンドで固められ、その日にしか見れないといった特別感は薄い。*6大体の方は「国産多いし、別に普段でも見られるだろう」と思うのではないだろうか。


※クラスト/グラインド バンドDISGUST 2014 obscene

しかし、昨年僕が実際に参加して肌で感じたのは、尋常ではないエモーションだった。確かに大型フェスとは違い、いつもと同じような場所でいつものバンドが演奏してるかもしれない。しかし、イベントに対する熱量は、いつものイベントと比較できるものではなく、各バンドの「憧れのバンドと対バンできる」といったようなアツい思いが演奏に伝わり、ただならないプレッシャーに包まれていた。そして、それが観客にも伝わってきて、”観客がイベントに期待する思い”とぶつかりあい相乗効果を生んでいた。いつもならば数人でしかモッシュしていないようなイベントでも、何十人もが身体と身体をぶつけ合い、汗を流し全力でバンドの思いを受け止める。まさに「フェス(イベント)の持つ力はすごいな!!」と、この光景に感動してしまったのだ。

だから「国産バンドが多いな」と感じても、少しでも気になるバンドがいれば参加してみるのも悪くないと思う。フェス飯やお酒以外にも、音楽にかける情熱のようなものがフェスには存在しているのだ。


◼終わりに
日本はなかなか激しい音楽は根付かないと言われ続けているが、まずラウパがメジャーどころでやってくれたし、フジもモーターヘッドを呼んだ。そして、アンダーグラウンドではオブシンやグラインドフェスなど、まだまだアツいイベントが目白押しなので、今後も積極的に増えてくれればと思う。僕もお金が尽きない限り積極的に参加していくし、何より音楽を生で聴くってのは音源では得られない快感がある。音楽は聴くというより身体で体感するものであり、現場主義を貫いて、今後もエクストリーム・ミュージックを聴いていこうと思う。そしていつかMaryland DeathfestDeathfests: Multiple events for your deathfest pleasures.)のようなフェスが開かれるのを期待する。

*1:通称ラウパ

*2:06年にはMETALLICASUMMER SONICで招聘してうるので、事実上スラッシュ四天王が揃った年である

*3:06開催時もDIR EN GREYやムック等のV系バンド出場でかなり荒れたが

*4:昨年は参加できませんでしたが、今年は検討中です。

*5:ストレンジャーさんのこの記事が素晴らしいアニメの音楽は何故、ヘヴィメタルと繋がり続けてきたか? その歴史を振り返りながら考える(文字数、一万字超で) - ご機嫌よう。さようなら。

*6:そもそも、なぜ日本のバンドが多いかといえば、グラインドコア、ゴアグラインド、クラスト、ハードコアパンクなどのジャンルは元々パイが小さい。ヘヴィメタルも日本ではリスナーが少ないが、ヘヴィメタルと比べ別に複雑なわけでもないし、演奏技術を競うような音楽でもない。結局、「ヘビメタ」のようにネタとして扱われることも少なく、ただ”ウルサイ音楽”とみなされてしまう。