夢と現実の対比 /『SHIROBAKO』 第19話「釣れますか?」感想

SHIROBAKO』18話もすごかったけど、19話はこれまでのベストだったと思う。特に『SHIROBAKO』の一つのテーマである「夢と現実」について、非常に上手い対比をやってのけた。今回は、19話で語られた「夢と現実」について書いてみたいと思う。

今回、後半の『山ハリネズミ アンデスチャッキー*1の秘話に山場(夢の舞台)が設置されているが、まず、その山場に向けて現実についての語らいを復帰してきた矢野と平岡によってする。(19話の土台である「現実」についての語りですね)

◼︎夢の舞台から降りた二人
会話から「昔、何かあった二人」を推測できるが、注目すべきはこの二人が「夢の舞台から降りている」ということ。平岡のみゃーもりに対する評価は「ど新人・容量悪い・夢を見ている」だ。平岡は一年で夢を見るのをやめたといい、矢野は夢を何十年も見ている人が好きだという。(これは木下監督とも取れるかな)更に矢野は、アニメの仕事は離れている時間が長いほど戻りたくなると語っている。これは、平岡はすでに夢の舞台に降り、淡々と仕事としてこなす人であること。矢野は、自分自身は夢から降りているが、夢を見ることは素晴らしいと、夢に憧れている人である。でも、自分は夢に真っ向から立ち向かえない。矢野から平岡への「みゃーもりをよろしく」は、夢を見ている人をサポートしたいという思いを、人から人へ伝えていく演出だ。(『SHIROBAKO』でよく見られる演出ですね)

◼︎夢の舞台の人たち
新人デスクみゃーもりが、目の前の忙しい仕事に「昔の方が良かったのでは?」と夢にくじけそうになる。ここから、彼女がその当時のエピソードを見ることになる。ただ昔話として語られるのではなく、実際にみゃーもりがそれを現実のように見てしまうところが『SHIROBAKO』らしさだと感じる。

彼女はここであの頃の人物たちの当時の姿を目撃する。そして、彼らが夢を語らうときは『アンデスチャッキー』のキャラになり、アニメの中で夢を語ってしまう。こういった演出は、後々に大倉から語られるが、夢の舞台も現実も、実はそんなに変わらないのではないか?ということを言いたい演出なのではないかと感じた。

少し時間軸が戻るが、みゃーもりが社長に連れられえて武蔵野動画に来た時「今、本当に面白いアニメが作れているのでしょうか?目の前のトラブルばかり...」と語っている。彼女には夢があるし、それをやりたいって思いも強い。でも、実際ハードルはかなり高い。夢って言っても、何をしていけば実現するかわからない不確かなモノだから。でも、それに対して、大倉が40年美術やってきたことを「目の前の面白そうなこと、必死にやってきただけ」と答える。それは不確かなモノだったけど、自分が好きなものをがむしゃらにやっていたら、ここにいたと。これは『SHIROBAKO』が一番語りたいことなんじゃないだろうか。夢という不確かなモノに対して、誰しも今いる場所(結果)にいるとは思わなかった。だけど、俺らは今もやっているよって。(「夢と現実」はそんなに違わないという語り)

また、みゃーもりは『アンデスチャッキー』を映写機で見ている。暗闇の中、映し出される映像こそ人が作った夢であり、彼女は夢を見て泣いている。武蔵野動画についた時、いつも目の前のトラブルばかりやっていると語っていたが、その後の大倉の語りによって、彼女は感じることがあっただろう。そして、大倉が描いた絵(夢)を見て、やはり彼女は泣いてしまう。

丸川社長は『アンデスチャッキー』で「武蔵野動画がなくなっても、またこのメンバーでアニメを作りたい」とみゃーもりたちと同じ夢を語っている。この辺りも夢と現実の対比。目の前のトラブルを処理していた人が、今も尚、夢を見続けているということ。また、作画担当の絵馬は、必死に目の前の絵を描くという仕事をすることで、彼女たちが好きな『アンデスチャッキー』のベソベソに似た似顔絵を描く。これも「夢と現実」関係で、この二つは延長線にあるということだ。

◼︎終わりに
だらだらと長文を書いてしまったが、19話本当に面白かったと思う。夢と現実を対比しながらも、実は夢と現実ってそんなに大差はなく、現実の先に夢があるんだよと。それは、恐らく『SHIROBAKO』で一番語りたかったテーマなんじゃないだろうか。流石にここまで見せられてしまったら、円盤買うしかない。給料入ったらポチります。

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