ねえねえ、ドラクエⅥのムドーの過去教えてやろうか?『マフィレセント』※ネタバレあり

例えば「ドラクエⅥのムドーの過去って興味あるかい?」と聞かれて、「いや、敵の過去とか興味ないし…」のような反応で、最初はあまり気にならなかったのですが、Twitterで結構好意的な意見が観られたので『眠りの森の美女』の前日譚『マフィレセント』を観に行きました。

鑑賞前に思っていたのは、あえて、呪いをかけた悪役にクローズアップしたので、「誰にとっての正義なのか」なのか、それとも『哀しみのベラドンナ』的な魔女になった女をこねくりまわしまくって狂いまくった映画作っちゃったのかと思ってましたけど、後者が少しズレた感じ。あえて言うならば、『クロノトリガー』で魔王の過去がわかってくる雰囲気と言った方がいいか。

アルティメット ヒッツ クロノ・トリガー

アルティメット ヒッツ クロノ・トリガー

鑑賞前か後に『眠りの森の美女』を見てから感想まとめようかと思っていましたが、近くのTSUTAYAは連日借りられっぱなしだったので、記憶違いがなければいいけど。そもそも当初のお話ではマフィレセントは、完全な悪として描かれていたと思う。正直「悪に理由なんぞいらん」のスタンスですし、無理矢理その悪の過去をほじくり返して語ろうとすると、物語にノイズが入ってくる。

初めに言うと、そのノイズが、あまり好きではなくてこの作品を完全に肯定はしていない。だけれども、そのノイズを緩和する為に使われたのが、「アナ雪」でも語られた「真実の愛」。


主軸となるストーリーは「眠れる〜」と一緒で「真実の愛」で姫が目覚めるというもの。その「真実の愛」を演出する為に使ったのが、「マフィレセントの恋」と「オーロラ姫の子育て」のエピソード。


長くなるので簡単にまとめると「マフィレセントの恋」は、人間に恋したマフィレセントが、恋した男に裏切られ羽をもぎ取られてしまったというエピソード。信じていた者に裏切られたマフィレセントは、「真実の愛」は存在しないと断言する。また、王位についたマフィレセントの元恋人についても、マフィレセントを過去裏切ったことを自分が一番よく知っているので、「真実の愛」は存在しないと思っている。


過去、裏切り裏切られた人同士が同時に「真実の愛」はないと思い、もちろん「1回会っただけ」の王子がキスをしても目覚めることはない。そもそも「愛」というのは、相手を想うこと、相手を愛すること(某自己啓発みたいで気持ち悪いな…)なので、相手を愛していることを自覚し、愛さなければならない。そこで出てくるのが「オーロラ姫の子育て」。


幼少の頃オーロラ姫は、三人の妖精と暮らしていたが、あまりにこの妖精たちが使えない為、マフィレセントや家臣がオーロラ姫の子育てを裏からサポートする。気がつけば、憎むべき相手の子供の命を救ったりと、いつの間にか彼女を愛してしまっていた。しかし、自分の呪いは、自分でも解けないようにしてしまったし、どうやってもオーロラ姫は眠ってしまう。そう言った気持ちが「真実の愛」とは知らずに、「真実の愛」なんてないと断言する。自分が断言してないと理解していたものが、ふと、自分のもとに訪れる演出。細かな演出というより、物語を大掛かりに改変してレールを引き直した演出ですが、童話にリアリティを、新たな解釈を付け加えたのは、なかなか上手かった。


『眠れる森の美女』と比較してみても、意味合いをつけたということについて、間違ってはいないと思うし、わりと楽しめた。ただ、最初のほうに言ったように、あまりこれまで本質に迫ることがなかった敵役というか、裏話なんて誰も気にしようと思っていなかったことの話を作ったので、個人的には無理矢理だなーと感じたのも事実。それでこの作品については、「好きでもないし、嫌いでもない」というどちらつかずの真ん中。


個人的にノイズとなったことについて列挙すると、

1)妖精が王様側についているのがよくわからない
2)マフィレセントが魔女として登場してきたときの王様側の反応

正直、どちらについても、説明を付けようとすれば全然説明つくんだけど、折角改めて新しい話を付け加えたのだから『眠りの森の美女』との繋ぎ部分というか相互関係のようなものは、もう少し入念に演出してほしかったという気持ち。まあ、もともと妖精たちは、マフィレセントのことあまり良く思ってなかったっぽいし、死んだ者だと思っていたマフィレセントが出てきても、絶対王政である限り、誰も不満なんて言わないだろうし。こういったことは気にならなければ、全然良いと思うのですが、気になってしまったからはどうしようもないという結論。


最後に言いたいこと書きましたが、決して悪い作品ではなく、いい映画だと思います。そもそも「悪」の裏側なんて知らねーよ!という人や『眠れる森の美女』ファンにはお勧め出来ない映画でしたね。悪くはなかったです。

アルティメットヒッツ ドラゴンクエストVI 幻の大地

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