共振する身体――『ベイビー・ドライバー』感想
ひょんなことから犯罪世界に身を投じてしまったベイビーは、最後の(借金返済の)仕事を終え*1、ファミレスで働くデボラをデートへ誘う。しかし、裏の掟(お約束)はそう簡単にベイビーを手放そうとしない。犯罪組織とベイビーの反発、犯罪組織と警察の反発、ベイビーの父親と母親の反発――世界は互いにいがみ反発しあい、暴力を生む。しかし、そんな中、デボラはベイビーに手を差し伸べる。
里親の爺さんとのコミュニケーションは「手話」や、スピーカーの振動(スピーカーに「手」を置く)から伝わる音楽。幼いころの事故により、ベイビーは耳鳴りを患うが、ipodから流れる音楽によって耳鳴りを打ち消している。音楽と共に過ごしてきたが、銃を耳元で発砲されたベイビーは音を失う。爺さんがスピーカーに手を置いたように、カーステレオに「手」を置き振動で音を感じる。その音はベイビーの手から身体へ――そして、デボラと共振する。*2
音楽と映像のシンクロによる見事なライド感の獲得と共に、振動を感じとる「手」は、犯罪世界とデボラの待つ世界――2つの世界の橋渡しとなる。終盤の展開は『トゥルー・ロマンス』を垣間見るようだったが、「復讐」や「逃避」にしては、理屈通りだったことが否めないか。もっと車をドライブさせる――力が物語に還元されることなく、乱暴に、無差別に、バラバラに広がっていけば、更なる境地へいったような予感。ただ、音楽がたんに「音」というバリエーションだけでなく、「コミュニケーション」につながっていくのは感動せざるを得ない。
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