AbemaTVで絶賛放送中の『少女革命ウテナ』話数ベスト10選

もう6月だっていうのに春アニメは『文豪』『ジョジョ』『マクロス』しか見ていない体たらく。最低限『三者三葉』『ふらいんぐうぃっち』『コンレボ』『アスタリスク2期』あたりは手をつけたいのだが、5月末までバンチャで見放題対象だった『ウルフズレイン』とか、同じくバンチャで『∀』なんかを再見し始めてしまい「ああ、やっぱええなあ…」と幸せを噛みしめていたらウテナAbemaTVで放送中じゃないですか、なかなか先に進まねえ…と思い踏ん切りつけるためにこんな記事を…

少女革命ウテナ #28〜29 | 【AbemaTV】国内最大の無料インターネットテレビ局
2016年に選ぶ、少女革命ウテナ話数10選。 - In Jazz

完全にterry-riceさんの記事に乗っかるかたちになるけど、ウテナは来年20周年だし放送しているならこりゃあやるしかないな…とAbemaで1日2話見て、それに加えBlu-rayで1話から見直して選んでみました。ちなみに上から好きな順です。

  • 第29話 『空より淡き瑠璃色の』

脚本:白井千秋 絵コンテ:橋本カツヨ 演出:岩崎良明 作画監督:たけうちのぶゆき

どこにも行く果てのない「想い」の物語。コンテの橋本カツヨは「情念の人」と呼ばれるだけあり、前衛的な演出が光る『ウテナ』のなかでも、キャラクターの想いにスポットを当てエグるとこまでエグりまくる。この画像の「椅子」演出はとても繊細でありながら「想い」が120%詰まった最高の演出だ。僕が、『まどマギ 叛逆の物語』『天使のはらわた 赤い教室』『忘れじの面影』など、すれ違う者たちの物語が好きな理由は、小学校のころ見た29話に呪われ続けているからなのではないかと思う。

  • 第15話 『その梢が指す風景』

脚本:榎戸洋司 絵コンテ・演出:星川孝文 作画監督:たけうちのぶゆき

ウテナや樹璃も好きなのだけど、ペアで考えると薫・幹梢の兄妹がいちばん好きかもしれない。決して超えてはならない禁断の壁。中学生という小学生のころのかわいい秘め事でもなければ、高校生のようなアダルティまでにはいかない中学生でなければならない絶妙な感覚を表現してる。隠してもギリギリ見えてしまう、少し見えても目を背けてしまう。そんな繊細さ。ウテナは同性同士ではないが『スタドラ』のミズノ・マリノに継承されているな、とよく思う。

  • 第20話 『若葉繁れる』

脚本:月村了衛 絵コンテ:橋本カツヨ 演出:桜美かつし 作画監督:たけうちのぶゆき

メインキャラクターではないすべてのキャラへの代弁。決して「特別」じゃない自分。だけど「わたしだって特別なんだ」と思いたいし、きっと「特別」になれるんだと信じている。誰もがこんなことを考えたことがあるんじゃないだろうか。『ウテナ』ではそれを若葉の物語として表現してしまう。決闘場での若葉の嘆きは悲痛な叫びだ。でもウテナの「君は僕の大事な友達だってことさ」で救われる命だってある。メインじゃなくても、きっと「特別」な瞬間があるんだ…

  • 第34話 『薔薇の刻印』

脚本:榎戸洋司 絵コンテ:佐藤順一 演出:桃美かつし 作画監督:門山洋子・長谷川眞也

「わたしが王子様になる」

ある少女が絶望によって自暴自棄になるなか「永遠」を見せられた。次の日、彼女の目に映る世界は全てが変わってしまったのだろう。「永遠」といった棺に閉じ込められようとも、たとえ、その日のことは憶えていなかったとしても”何か”が少女のなかに残っている。
王子様と魔女の寓話的な物語をあの影絵少女たちが語る。『ウテナ』の物語のなかでもとてもにキーとなる話数であり、「永遠」の秘密を垣間見ることができるだろう。「王子様になる」こんなに優しくて気高くて気持ちのいい、そして泣きそうになる言葉もなかなかない。

  • 第18話 『みつるもどかしさ』

脚本:比賀昇 絵コンテ:西村聡 演出:岡崎幸男 作画監督林明美

黒薔薇編でもトップクラスに好きな話。「早く大人になりたい」僕はあまり思ったことがないのだけど、思ったことがなくても早くいろいろな経験がしたいと思ったことがあるので、ある意味同じようなことなのかもしれない。年上の幼馴染と何もわかっていない鈍感な石蕗の物語のなかに、七実がダシとして物語に絡んでくる。石蕗がひたすらキスシーンを見ているときの茉莉の発言は本当に確信をつくような言葉だと、たまにふと思い返すことがある。いやあ、幼馴染いいな…

  • 第8話 『カレーなるハイトリップ』

脚本:比賀昇 絵コンテ:西村聡 演出:西山明樹彦 作画監督:竹内昭

どこかギャグが目立つ七実回のなかでも、振り切った”ずるさ”の面白さがある。象に次ぐ象の連続撃…何かに挑戦しようとすると「障壁」が出現してくるものだけど、象が、象がね、、、七実回ではギャグ回として第6話『七実様御用心!』と、ギャグ回ながら何気に生徒会メンバーが話す『デミアン』の物語的にも重要な27話『七実の卵』と迷ったけど、振り切れた”ずるさ”に完敗かな(笑)

  • 第7話 『見果てぬ樹璃』

脚本:榎戸洋司 絵コンテ:橋本カツヨ 演出:岡崎幸男 作画監督林明美

ウテナ』での橋本カツヨ初コンテである。ウテナと樹璃のシーンを見ても非常に凝った演出をしていることがわかる。樹璃回ってのは『ウテナ』全体から見てもかなり表現というよりドラマに力が入っているように感じる。それは橋本カツヨのメインが樹璃だったからといったこともあるのだろうか…カツヨよ…

  • 第30話 『裸足の少女』

脚本:榎戸洋司 絵コンテ:風山十五 演出:桃美かつし 作画監督香川久

暁生の存在によって少しずつウテナに変化が現れる。姫宮に対してどこか気まずそうな態度や、バスケットゴールから落ちてしまうウテナ…。それまで「王子様になる」といっていた少女が”恋”によって女性になっていく物語。ウテナ特有の奇抜な演出よりも戸惑うウテナを演出する繊細さが光った回だと思う。

  • 第9話 『永遠があるという城』

脚本:榎戸洋司 演出・絵コンテ:風山十五 作画監督:門之園恵美

コンテ・演出が風山十五ってのがあるからか、冒頭の冬芽と西園寺の試合風景を見るガヤの表現がとても面白い。『ウテナ』的に見ればこういった表現がすごく自然な流れのように感じるんだなあ。物語的に見ても9話は革命のキーなる話だろう。「永遠」を見せた者と見せられなかった者たち。見せられなかった者たちも気づけばその棺に閉じ込められていたんだ…

脚本:榎戸洋司 絵コンテ:橋本カツヨ 演出:岡崎幸男 作画監督林明美

ウテナ』という物語を考えた時、37話の方が重要だよな、、、と思いながら最後まで悩みこちらにした。理由としては御影草時という人ほど「永遠」に囚われ続けているキャラクターはいない(暁生除く)よなといった思いと、なんといっても戦闘パートはウテナの中でも随一の面白さがある。御影の剣でウテナの髪がさらっと切れてしまう作画や、ローアングルで煽るような画面構成、そして御影の秘密に迫るスリリングさ、どれを取ってもピカイチな面白さがある。それとピング髪が好きなんだよね。「やはり跳ねた」


【まとめ】
本当は39話の物語のなか、10選ってのは比率的に多すぎるかなと思いながらも『ウテナ』を見直しているとどの回もどこか選びたくなる。一見ギャグに見える七実回は案外『ウテナ』の核心をつくような物語が多く、上でも書いたけど特に27話『七海の卵』なんかは生徒会メンバーの語り(『デミアン』からの影響)を通して本作を見通すと重要な回だと気づく。樹璃回として2つのエピソードを選んだけど、枝織が登場する17話『死の棘』なんかもちょっと選びたかった。薫・幹梢としては『光さす庭・フィナーレ』なんかも選びたかったけど、やっぱり15話の完成度が異常に高い。またどうも心の残りなのが、「きっと十年後にも、一緒に笑ってお茶お飲もう。約束だ」の37話。革命を考えた時、ものすごく重要な話で、囚われていた生徒会メンバーにも少しずつ変化が見られる。少しずつ変化する物語、ウテナのラストパート…きっと十年後にお茶を…(十九年経ってしまった…)

ということで、10選をやってみましたー。物語としては人間の暗い面を垣間見る黒薔薇編が一番好きだったりします。ただ、やはり僕のなかで29話は物語の指標的なもので、『ウテナ』的に言うならばこの回が僕にとっての「永遠」。いつまでもこの物語に取り憑かれている。やっぱこういう10選やると趣味が出るよね。AbemaTVで絶賛放送中なのでガンガン見ようぜってことで。次の『ウテナ』の話題はまた十年後かしら、かしら、ご存知かしら